継続
「アンタ達の主従関係の良さはいいのよ。さっさと館に戻るわよ。七も待たせてるし、コイツの治療をするんでしょ」
カイトは零に肩を貸し、落ちた赤の侵入者の左腕を掴んだ。触れてみると、腕の太さから赤の侵入者は男だと考えられる。
『……黒の侵入者は赤の侵入者よりも細身ではあったな。君と同じぐらいか。男女どちらもあり得るか』
カイトにはそこまでの余裕はなかったが、死神は黒の侵入者の体格も覚えているようだ。
赤の侵入者よりも細身。カイトと同じぐらいであれば、男女の判断は難しい。
「すみません。館に戻る前に見回りを続けたいです。壱が見た侵入者が何かしていたかもしれませんし」
零は腕の治療よりも、見回りを優先する事をキスに懇願した。黒の侵入者が何かの仕掛けを設置していてもおかしくはない。
「アンタ……主に裏切られたかもしれないのに」
キスは零がゴールド=ゴールに利用され、裏切られた可能性があるのを口にした。
こんな目にあっても、主に尽くす意味があるのか。彼女は主と命約を結んでいない。それをキスは知らないはずだが。
「主とはそういうものなのではないですか? 私が上手く立ち回らないと駄目だったのかもしれませんし。キス様やメアリ様に魔法を継承させるつもりはあるはずです」
これも継承するための試練の一つとでも、館の主は考えているのか。零は候補者達の補助役の従者であり、襲う側も館の主の従者だとも考えられるのではないか。
だとすれば、黒の侵入者自体が館の主なのか? いや、零曰く、ゴールド=ゴールは動けない状態のはず。 黒の侵入者も従者だと考えられるが……魔法を使われたような形跡がいくつもあるのだ。
「……アンタの言う事は一理あるわね。死ぬのが嫌なら、継承権を辞退して、ここから抜け出せばいいだけの話だし」
キスがそう言うのは、彼女自身は辞退しないという事だ。当然、カイトの呪いを治すため、メアリも諦めるつもりはないだろう。
「零が見回りを続けるのなら、私も同行します。見回り以外に主から指示があったりしたのですか?」
零が見回りのするのであれば、メアリも共にするつもりのようだ。彼女とカイトの二人で行動した結果が今の状態。
メアリも回復はしていないが、一緒に行動する事で、カイト達の身の安全は守り、侵入者が再度襲い掛かるのを阻止出来るはず。
零がそこまでこだわるのも、何かしらの理由があるのか。館の主が見回り以外に指示を出していてもおかしくはない。
「それはないです。指示されたのは、館の外側が壊されていないかの確認だけです」
館の一部が破壊され、内部に侵入されないかの確認。そんな指示であれば、ゴールド=ゴールと侵入者の繋がりはないようにも思える。




