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鈴の音

「……いいわ。片腕で私達を相手に出来るわけないし。館の主が共犯であれば別だけどね。念の為、この腕も処分しなさいよ」


 キスは赤の侵入者を追う事はしなかった。メアリも目を覚ましたが、完全に回復したわけではない。零も腕の治療が必要だ。


 更に森の中へ入れば、魔物と遭遇する可能性も否めず、ここは館に戻るしかない。


 転がっている赤の侵入者の左腕を持ち帰り、処分するように、キスは零とカイトに指示する。館の主の回復魔法があれば、切り離れた腕を繋げる事が可能かもしれない。キスはそれを危惧しているのだろう。


「キス様。それは……零も狙われたんですよ。壱を庇ってもくれました」


 メアリは今も零の傷を見ている。矢を抜くのは館に戻ってからにするようだ。自身も少し息を切らしているのもある。


「魔法使いにとって、従者は物なのよ。コイツを切り捨てる事も考えられるでしょ。他の従者も用意してもおかしくはないわけだし。少しは疑っておくべきよ」


『彼女の言う通りだな。零が狙われたところで、館の主の疑いを消すわけにもいかないぞ。零に外へ出る指示を出したのはゴールド=ゴールなのだからな』


 二人が館を出る前、零が主の指示だと言葉に出している。キスはそれを疑っているのだ。


 襲われるとしても、タイミングが合いすぎているからだ。館にいた侵入者が外に出て、カイト達を襲ったのもそうだ。


 誰かが二人に教えた可能性が高い。それを考えると、館の主が一番怪しく思えてくる。


「まぁ……アンタの疑いは一気に下がったわ。壱も助けられたんだから、肩でも貸してあげなさいよ。勿論、アイツの腕も忘れずにね」


「そうですね。私は大丈夫なので、零を助けてあげてください。足も痛みがあるようなので」


 メアリ自身も目覚めたばかりで弱っているのだが、零を助ける事を優先する。


 彼女も赤の侵入者相手に無茶な動きをし続けた結果だろう。燕尾服の加護もあるなか、ズボンの何箇所が切れてる部分もある。


「分かりました。先程は助かりました。今度は僕の番です」


 カイトは零が押し倒した事で助かった身だ。手伝うのは当然であり、感謝の言葉も必要だ。


「それはお互い様ですよ。壱がいなければ、私も無事ではなかったと思います。メアリ様達も助けに来たかどうか」


「そこは否定しないわよ。アンタの動きで鈴が鳴って、メアリがすぐに目を覚ましたから。あれには私も驚いたぐらいだし」


 カイトが黒の侵入者の矢を避けた。その時に鈴が鳴ったのだろう。赤の侵入者との戦闘でも何度も鳴ったのかもしれない。


「鈴の音が鳴るという事は、壱が危険な目に合ってるわけですから」


 メアリは当然だとばかりに答えるが、意識を失いながら、鈴の音に反応するのは凄い事ではある。

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