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窮地

「それでも続けるしかありません」


 零はカイトの疲れを考え、無謀にも一人で攻撃を仕掛ける。彼女自身も体力の低下により、斧は両手持ちになり、雑な攻撃になってしまっている。隠し武器もとうに無くなっている事もあり、両手持ちに替えたのかもしれないが。


 勿論、両手持ちで片手より重みを増せたとはいえ、赤の侵入者に弾き返されただけでなく、今まで一番大きな衝撃音が響いた。


「壱!! 避けて」


 零が叫ぶ。危険なのは彼女の方。赤の侵入者が追撃がカイトへ向けられたわけではない。


 彼女の視線も剣に弾かれた反動で、赤の侵入者とは別方向、森の方へ向いている。


 カイトも赤の侵入者から目を背け、零が向いた視線に合わせる。


 森から矢の姿が見える。木々の隙間をすり抜け、カイトの体に届こうとしているのだ。


『ちっ……私の落ち度だ。剣と斧の衝撃音で、聴く事を邪魔された。相手はそれを狙ったのかもしれない。どうにか致命傷だけは避けてくれ』


 矢は頭ではないが、軌道的に胴体の何処かには当たってしまう。


 燕尾服の加護があるといっても、そこは相手も承知であり、貫けると判断しているはずなのだ。


「腕の一本を犠牲にすれば」


 死神との会話で一時的に時間が止まっているとはいえ、ナイフで矢を防ぐほど器用でない事は彼自身が一番分かっている。


 であれば、致命傷とはならない腕を盾にするしかない。ナイフは片手でも扱える。


「なんで……」


 カイトはそう決めたところで、時間は動き出す。矢が届く前に腕を動かせるのかが問題だった。


 しかし、気付けば、零がカイトを押し倒した事により、回避成功。だが、代わりに彼女の左腕に矢が突き刺さる。彼女が着る燕尾服の加護を貫いたのだ。


「流石に見過ごしたら、壱が殺されてました。少しでも生き残るためは、二人でなければ」


 零はそう言いながらも、矢が突き刺さった痛みで斧を落とした。残っている右手で持つにしても、上手く扱えるか。利き腕だとしても、左腕の痛みが影響を与えてしまうのは間違いない。


 絶対絶命の窮地になったのは確実。彼女の右腕は使えず、カイトは倒れた状態。


 赤の侵入者が反撃を気にせず、攻撃するチャンスであり、一気に片付ける事が出来る好機でもある。


 それでも赤の侵入者は二人に攻撃せずにいる。いや、出来なかったのが正解だ。逆に森の中へ逃げる事を選択した。


「壱!!」


 メアリがカイトの名前を叫ぶ。意識を失っていたはずの彼女が、彼のピンチに助けに来たのだ。


「助けるとは思ってなかったけど、アイツが庇ったのは見えてたでしょ」


 しかも、メアリだけでなく、キスの姿も。


 メアリはカイトがいる場所に駆け寄ろうとする中、キスは手の平を広げた右腕を赤の侵入者に向けている。


「私の色を使うなんて、舐めた真似するじゃないの」

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