立場逆転
「それで……メアリ様達に言えない事というのは? 勿論、二人には言いません。約束します」
カイトがメアリに伝えたところで、この先はない。未来が変化するわけではない。
魔法使い同士での約束は絶対。従者の中でもそれは通用する事だ。
「伝えたところで、キス様は信じないでしょうけど。従者と魔法使いの立場が逆転するそうです。もしかしたら、魔法使いそのものがいなくなっている可能性もあると」
「従者と魔法使いの立場が逆転!?」
そんな事なんてあるのだろうか。力は圧倒的に魔法使いが上だ。今も魔法使いが何人もの従者を従えているのが現実。
カイトが死ぬ前はどうだったか。メアリの親友である魔法使いは健在であり、彼を従者としていた。
他の魔法使いも存在しており、メアリの事を調べる時にも目にしている。
魔法使いと従者の立場が逆転していた事はない。世間に興味がなかったとしても、カイトもそれだけは分かる。
「そんな事がありえるわけが……」
カイトは『ありえるわけがない』という言葉を留めた。
メアリに一度聞いた事があるのと、彼女の親友の魔法使いの言葉を思い出した。
魔法使いは年々と数を減らしている。魔法使い同士ではなく、従者との子供では魔力を持つ子供は半々、それ以下だと。
今でも魔法使いより、従者が多数なのだが、その差が更に広がるのであれば、従者達が反逆する時が来てもおかしくはないのかもしれない。
ただ、それは本当にもっと先の話になるはずだ。予知は間違ってはいないかもしれないが。
「私もそう思うのだけど、そうなればとも思う。七や三、十もそう思うはず」
虐げられた従者達はそうだろう。
「そして、この継承争いが分岐点になるらしいです。これは主本人に直接聞いたわけではなく、紙に殴り書きで書かれているのを見ました」
「分岐……ですか? その紙に書かれたのも予知に関係ありそうですね。その紙はまだあったりしますか?」
零はゴールド=ゴールに直接聞いたわけではなく、紙に書かれた内容を見たようだ。
従者と魔法使いの立場が逆転する事になる始まりが、この事件となるのか。
だとすれば、主も魔法使いであるのだから、それは阻止したいはずではないのか。
そうなれば、零と館の主の考え方は違ってくる。彼女が主を嫌っていなくても、先々の事を考えれば、立場は逆転している方がいいに決まっている。
「あの時は……書斎で見たような気がします」
それらしき怪しい紙をカイト達は見つけていない。もしかすれば、それが書斎の謎解きの報酬として出てくるのか。




