集合
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「皆様、時間通りに集合して頂き、ありがとうございます。継承権の説明は夕食の後で。今は出来立ての料理をご堪能ください」
二十時。招待された魔法使いと、その従者達全員が食堂に集まった。
上座と下座は誰もおらず、それ以外の席にメアリ達は自由に座った。その後ろに各自の従者が立つ形だ。
料理を運んだのは零ではなく、其々の従者達。更に言えば、主達の前で毒見もしている。
カイトが調理を手伝った際、零が毒を入れる事はなかったが、ディアナ達の警戒心は強かった。
この館の料理だけではなく、他者が作る物に対して、従者に毒味をさせるのは魔法使いにとっては当然の事。
「二十時までの間、ゆっくりと休めたでしょうか? メアリ様に許可なく、壱を借りた事をお詫びします。彼を休ませるはずが、本当に申し訳ありません」
零はメアリに頭を下げた。二十時になったのも、カイトを休ませるつもりでのメアリの提案だったのもある。
「大丈夫ですよ。話は壱から聞いています。私の従者も少しはお手伝いをと思ってはいましたから」
メアリは零の行動を許した。
「従者にお優しい事で。そこは簡単に許すべきではないでしょ」
キスはメアリの言葉を軽く否定した。それに関して、ディアナやアルカイズは何も言わないのは、二人の考えも同じだからだろう。
三人の従者は探索を命じられ、零が協力を求めていたら、妨害行為とされていただろう。それによって、彼女が処罰を受けてもおかしくはなかった。
ただ、この状況では無理な話ではあるが。継承権の説明は零にしか不可能なのだから。
『君は怒られたのだがな。それも彼女が心配したからだろうな』
カイトは赤従者と白従者の三の視線を受け、警戒するためにも僅かな時間の探索を避け、メアリの元に戻る事に。
戻った際、メアリはカイトの主ともあって、すぐに彼が不調である事に気付いた。
原因は魔力が体を蝕むからなのだが、零の手伝いをしたからだと伝えた。協力したのは事実であり、嘘は言ってないのだが、すぐにバレてしまった。
その事を黙っておこうとしたカイトに対して、メアリは怒り、この後に継承権の説明があるにも関わらず、彼女はすぐにでもカイトの魔力を吸い上げようとしたのだ。
『それを一日の終わりまで伸ばすのに、彼女を説得するのには骨が折れたな。そっちの方が疲れたのではないか?』
カイトはメアリが魔力を吸い上げるのを拒否する理由を述べたが、集合時間少し前まで話は平行線だったが、最後にはカイトではなく、メアリが妥協する形に。
それが今日という一日が終わり、皆が休む時間になった時。加えて、全部の魔力を抜くのではなく、メアリ自身が体に不調をならない程の量である事。
「流石に毒を盛ってはいないな。僅かに入っていても、三は気付く」
カイトを含め、従者全員が毒味をしたところで、主達は料理に口に運んでいく。
勿論、カイトも料理に毒が入ってない事に気付いた。毒が体に入れば、魔力による体の影響が軽減されるからだ。