同行
「……どうしますか? 僕の体はもう大丈夫です。三の死体を調べるのは、今回しかないかもしれません。メアリ様の事もキス様が見てくれてます」
カイトは行く気でいるようだ。意識を失ったせいで、全員に迷惑を掛けた事に対しての償いでもあるのだろう。時間を取り返すためには、それぐらいはしなければならない。
それだけでなく、彼自身が純粋に三の死体が気になっているのもある。死神の言葉によって、あれが本当に彼女の死体かどうかの確認が出来るのだ。
アルカイズが死んだ事によって、彼女の死は決定的ではあるが、あの死体がそうであるかは話が別だ。
死体に違和感があったのは確かなのだから。首を消す理由もなく、血の跡もおかしい。
カイトが死体の側に寄れば、三であるかの確認を死神の嗅覚によって出来る可能性はまだある。調合室で触った臭いが、三の手に残っている可能性があるからだ。
『……そうだな。この話に乗ってみようか。だが、警戒は怠るなよ。次の狙いは君かもしれないからな』
行方不明になる順番を考えれば、最後に消えるのはメアリ。だが、従者の死は別だ。先にどちらが狙われてもおかしくはない。
本来、カイトはこの場に存在しないのだ。侵入者もメアリ達を観察していた場合、邪魔になるのはカイトの方。
館に残ったとしても危険が無くなるわけではない。今、侵入者は魔法使いと従者の二人がいると考えられている。中にいるのが従者だったとしても、アルカイズを殺害している可能性もあるのだから。
メアリが眠っているのであれば、戦闘面で秀でた七を置いた方が彼女の安全がより増す事にもなる。
それはある意味、七を殺すのは難しい事も意味するわけで。
「コイツだって、メアリがこんな状態でついて行くわけないだろ。メアリもそこは」
「行きます。行かせてください。キス様達に迷惑を掛けた以上、何か貢献しなければ申し訳ないです。それに……これ以上の被害をメアリ様も悲しむはず」
キスはメアリのためであるのか、カイトの同行も拒否させるつもりだったようだが、それを否定した形になってしまった。
「メアリ様が目を覚ました後、僕から話しますから。キス様と彼がいれば、メアリ様を安心して任せられます」
「……はぁ……私は止めたからな。お前が持つ鍵はメアリのマントの中に入れておけよ。それとアンタが持っている鍵は」
キスは魔法使いの命令で、カイトを止める事はしなかった。水晶玉による監視だけでなく、カイトの目を頼りにしている面もあるのかもしれない。勿論、それは戻ってくるのが前提の話になる。
「……そうですね。キス様……七に渡しておきますよ。その中にあるのは入口、倉庫、客室、浴室の鍵だけです」
零が外に出る以上、鍵は中に置いてなければならない。三の時のように入口を施錠するためでもあり、万が一のためでもある。
彼女はそれを拒否する事はせず、七にその鍵束を渡した。まだ開けられていない部屋の鍵は、謎解きに隠されているのだろう。余計な鍵は鍵束の中にはないようだ。




