気を失ってた時間
「すみません。キス様に聞いても構わないですか?」
「アンタが気を失ってた間の事よね。まぁ……いいわよ。時間はある事だし。メアリから聞ける状態じゃないでしょうから」
メアリにすぐに意識を失った……というよりも、寝息を立ててる事から、眠ってしまったのだろう。
回復するのには、睡眠が手っ取り早い。キスもそう判断して、メアリを起こす事はせず、目が覚めるまでは待つつもりのようだ。
『私もそこは気になっているところだ。時計が目に入ったが、一時間以上は経過している。その時間があれば、謎解きの一つをするぐらいは可能だろうが……それをしなかった事はキスも口にしていた』
キスはメアリと協力関係である以上、単独で謎解きに行く事はない。侵入者の件もあるが、謎解きの失敗も考慮しなければならないからだ。
『確かにメアリは食堂から動かず、キスもこの場に残ったのだろうが……七と零の姿が見えない。調理場で仕事をしているわけでもなさそうだ』
零だけなら館の管理もあり、姿が見えないのは分からないでもないが、キスの側にいるはずの七の姿がない。
「二人の姿も見えないようですが」
「七にはアイツの監視……手伝いをさせてるわ。十が消えた部屋の掃除ね」
キスは零を疑っている。七にも怪しい動きがあったのも承知済みだ。それなのに二人が共に行動する事を彼女は許可したようだ。
「それは……キス様の指示ですか? でなければ……大丈夫なのでしょうか?」
魔法使いに対して、余計な発言ではあるが、気にするべきところではある。
キスが七の目を借りる魔法を再度使用しているのであれば分かるのだが、彼女はメアリとカイトの姿を見ている。
彼女が借目の魔法を使う場合、自身の目は使えなくなる。メアリとカイトがこの状態で、二人がいないとなれば無防備に近い。
ここで二度使えば、キスが今日使える魔法は残り一回になる。今日は探索を諦めるとしても、彼女なら使わないのではないか。
「怪しい面がないわけでもないけど、問題ないわね。七と零の二人の行動は魔導具で監視してるから。メアリが目覚めるぐらいは保つらしいわ」
キスが座ってる側に水晶玉が置いてあった。それを見ると、小さいながらも七が階段を降りていく姿が確認出来る。零の姿は見当たらない。
ただし、七を見る角度からして、誰かがその姿を見ているようだ。それはキスが使った魔法にも似ている。
「只今戻りました。掃除をしている間、襲われる事はありませんでした。怪しい気配も感じられません」
七が食堂へ入ってきた。その後ろには零の姿が。水晶玉から見えていたのは零の視線。
彼女はカイトが気を失っている間に眼鏡を装着していた。これが水晶玉と連動している魔導具なのだろう。




