角度
「それは分かっています。ですが、私達が食堂で休み、二人だけで行かしたのは」
「七が一人の時に何もしなかったんだから、大丈夫よ。むしろ、魔法使いと従者が別々になった場合を知りたかったわけ。危険はお互い様よ」
魔法使いと従者が別行動になったのは、アルカイズの死体運びに壱と七の二人だけで向かわせたためだ。
これは命約があるキスだけが安全な事になるわけだが、命約がない事を七と零の前に言うわけにもいかない。同等の状態を示す必要もある事をキスも分かっているからだ。
「二人が無事に戻ってきたのだから、何も問題はないわよね。ディアナの部屋に変化がない事も報告があったでしょ」
「再度報告します。ディアナ様の死体及び、部屋に変化はありませんでした。アルカイズ様の死体は流石にディアナ様の横に置けず、床に眠らせる事にしました」
アルカイズの死体は彼の部屋ではなく、ディアナと一纏めにするため、彼女の部屋に置く事に。その方が監視しやすく、二つの遺体を消すのを難しいはず。
それだけでなく、死体を腐らせないため。調理場を涼しくするための魔導具を置く事を零が提案したのもある。
そのため、ディアナの部屋に入れば、寒く感じるだろう。
「それは仕方ありません。死体を保存するための最低限の事はやりましたよ」
ディアナの遺体は発見後、カイトと七がベッドに運んでいる。そこへアルカイズもとなれば、広さが足りず、彼の遺体は床に置く事に。
それも彼女のベッドの側。並べるように置いた。遺体を保存するため、寒さの位置を均等にする方が良い。
七が二人に報告した内容は間違ってはいない。だが、全てを報告はしていない。カイトもそれを黙っているのは同罪ではある。
彼がしたのはディアナの死体があった場所に、アルカイズの死体を一度置いた事。
同じ姿勢にして、彼女が何を示したのかを調べた。七も彼女の姿に違和感があったのだろう。
主のキスがいた場合、表立って動く事も出来なかったわけだ。
それに関してはカイトも同じだった。彼は七の行動を見て、ディアナの死体のように横になる。
彼女が指差した表。死神はディアナのダイイングメッセージの可能性があると示唆した。それをカイトは誰にも言っていない。
それのヒントらしき物も見つけていない。指が曲がっている事に意味があるようにも感じる。
これに対して、カイトと七は意見を言い合う事もなく、互いに黙認。どちらも何も見つける事が出来なかったからだ。
ただし、死神が一言、『角度だな』と口にしていた。カイトがその意味を尋ねても、答えは返ってこなかったが。




