あやふやな記憶
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「ふぅ……これからどうしようかしら。客室側も見て回るか、謎解きを再開させるかね」
「客室は全てに鍵をしているはずですが……館内にいるのが従者の場合、入るのが厳しいのではないでしょうか? 私達がこの場に集まっている時点で、動く事は可能です」
「そうよね。アルカイズや三が死んだところで、やる事は変わらない。私達と従者が別行動になっても、どちらかに何か仕掛ける事もなかったわけだし。アンタも致命的なミスを本当にしていたら、許すどころの話じゃなかったからね」
「そこは私やキスにも問題がありましたよ。実際、鍵は全て施錠されていたので、杞憂に終わったわけですから」
「申し訳ありませんでした」
メアリ達は食堂で昼食を取り、体を休めている最中だ。
アルカイズの死体を発見して、廊下に戻った後、彼女等はどうしていたのか。
七は待機したままで、他の部屋から侵入者が出てくる事はなかったようだ。
そして、衣装室、書斎と開いてる部屋を確認。ピアノ室と調合室に関しては施錠されているので省く事に。
絵画室のような特別なドアではない事は分かっている。一度開けており、零も絵画室のドアを教えたのだから、別の入口があるのなら、メアリ達に教えているはずだ。
もう一つの部屋に関してはメアリやキスは鍵を所持していない。零もその部屋に口を挟む事はしなかった。何処かに鍵が隠された状態なのだろう。
こうなってくると、残るは客室側となるのだが、そこで零がミスを犯した。いや、犯すところだった。
館の入口に再度鍵をしたのか。その記憶があやふやになっていたと告白してきたのだ。
この時点で二階の客室側に行くのを諦め、メアリ達は入口を確認しに行く事を選んだ。
これに関しては、零一人に行かせるわけにもいかない。この数時間で二人が殺されている。侵入者二人を合流させるのは危険でしかない。
キスはそれを反対するどころか、彼女が真っ先に決めた事だ。
とはいえ、全員で行く事はなく、先程と同様に七を二階に残しておく事に。
勿論、絵画室前ではなく、階段付近。一階からも見える位置でだ。
何かあれば、七は踊り場に飛び降りる事も出来るらしい。
ここでメアリ、キスの魔法使いとカイトと七が別行動を取ったわけではない。
『施錠はしていたが、鍵を付けたままだったのは危なくはあったな。奪われていてもおかしくはなかった』
結局、入口の鍵はされていた。ただし、複数ある中で、メインの鍵が付けたままの状態だった。
キス達と二階に行く話に加わった事で、頭から抜けたのだろう。
念の為、入口近くにある従者の部屋も零とカイトが中を見たが、荒らされている形跡もなければ、誰かが隠れている様子もなかった。
それでも従者の部屋に関しては謎が残ったままではある。
どうやって、カイト達が眠らされたのか。
七、三、零の誰かの仕業である可能性もあったが、三が殺されたのであれば、分からなくなってくる。




