異彩の絵
「……けど、この絵だけは異彩を放ってるわよね。他の絵みたいな天使や悪魔には見えないし。それでも一番目が惹かれる。」
「……ですね。人の姿をしているに……この世の物ではないような不思議な感じが……一体何者なのでしょうか? まさか……彼女がゴールド=ゴールなのですか?」
天使と悪魔の絵の境界線。丁度、真ん中にある壁に掛かっている絵。それは他とは全く違い、女性の肖像画だった。
ドアとなっている風景画を抜きにして、多くある絵の中で唯一違う。それにこれだけが魔力を宿していない。
単なる肖像画にも関わらず、一度見てしまえば、そちらに目が向いてしまう。キスやメアリはそうなってしまっている。
「違います。この肖像画は主ではないです。ただ、主が一番大事にしている絵ではあります。彼女と出会った事で、人生が変わったとも言ってました」
その肖像画は館の主ではないようだが、一番大事な絵らしい。それは階段の踊り場に飾ってあるゴールド=ゴールよりも上という事だ。
それを考えると彼女は一体何者なのか。
「実在した人物なのですか!? 彼女と出会った事で回復魔法や予知魔法を手に入れた……というのは流石に」
人生の変化とまで言うのであれば、回復魔法や予知魔法を継承したとしてもおかしくはない。
「……ちょっと待って。この肖像画の下に文字を入力する箇所があるんだけど。しかも、四つの文字? 謎解きは彼女の名前を入れる事なわけ?」
「本当ですね。これはアルカイズ様が入れ込んだのでしょうか? それを間違った結果が……」
肖像画の下に四つの仕切りがあり、一番右端が◯が表示されている。そして、他四つには文字がすでに入力されている。
その文字はゴールド。館の主であるゴールド=ゴール。四文字であるなら、ゴールドを入れるのもおかしくはない。
アルカイズは彼女をゴールド=ゴールと勘違いしたのかもしれない。零がいなければ、メアリもそう思っていただろう。
これで報酬らしき物がないのだから、ゴールドと入力するのは失敗を意味しているはず。
「ゴールドと入れてる時点で怪しいわね。そのお陰で違う事が分かったのは助かるわ。こうなってくると、答えかヒントは別の部屋でしょ」
アルカイズが謎解きをした場合、ある程度この部屋を調べた後にするはず。それでも失敗したのは、答えやヒントがこの部屋になかったのだろう。
単に見つけられなかったというのもあるが。
「ここには絵があるだけだし、部屋から出るわよ。書斎とかも確認しないと駄目だからね」
キスは絵画室に一度見切りを付けて、別の部屋を調べる事を選んだ。あの物音がアルカイズの倒れた音だったとして、この部屋の罠ではなく、侵入者に殺られた可能性もある。
だとすれば、侵入者が二階内にいるのは確実だからだ。




