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「……十分だけ。十分だけ休憩しようと思います」


 カイトは死神の言葉で、黒のベッドで少し休む事を選んだ。休むと言っても座るだけだ。


 死神は彼の呼吸の変化、動きが少し鈍くなっているのに気付いた。


 擬似的世界であったとしても、カイトの病気は治っていない。むしろ、状態が悪くなってもおかしくないのだ。


 メアリやカイトの記憶では、病気の悪化でこの場に来る事が出来なかったのだから。


 少しでも症状を良くするためには、メアリがカイトの中に溜まった魔力を吸い上げるしかない。ただし、その反面、メアリの体調が悪くなってしまう。


 この状況でキス達に弱味を見せるわけにもいかないが、彼の姿を見れば、彼女は関係なしに回復させようとする。


 それが元でメアリの死に繋がっては報わない。


 カイトだけなら無理をしていただろうが、死神はそこを考慮したのだろう。


『回復してもらうとしても、彼女達が休むタイミングでだな。少しでも抑える方法はないのか? 彼女がいなくとも、数年は保ったのだろ?』


 メアリが行方不明になって、カイトが生きたのは五年。魔力を吸収してくれたのは彼女だけだったはず。それが五年も生きてこれたのだ。何かしらはあるはずだ。


「……あります。ですが、ここでは」


『なるほど……毒は薬にもなるか。この館にあったとしても、流石に入手は無理だな。彼女の前で使うのも無理があるか』


 カイトの病気を抑えたのは毒。新たな主は実験薬を従者達に試していた。それが魔力と結び付き、弱めた可能性があると彼は思っているようだ。


 とはいえ、毒は完全に解毒は出来ておらず、病気と毒の両方がジワジワとカイトの体を蝕んでいった。


 死神の言葉に対して、カイトの頭の中での返事がないのは休息に入っての事。束の間、限られた時間での休憩は従者にとっては必要なのだろう。


『十分経過したぞ。ギリギリまで休んでも、こちらとしては構わないが』


 死神は十分経過するまで、彼に話し掛けず、回復させる事に費やさせた。


「……大丈夫です。少し落ち着けました」


 先程までかはカイトの息は整っている。


『この十分間で誰かが侵入してきたかは不明だ。私が作った擬似的世界だが、君を通して、この世界を見たり、聴いたりしている。君が眠っている間、何が起きてるかは私も分からない』


 カイトが見ていない事は、死神も見えてないという事だ。それは聴く方に関しても同じ。


『だが、君が見ていながら、気付いてない事に気付く事もある。僅かに聴こえた音を私が拾える事もあるからな。勿論、何処に注目するかによるぞ』


 それは彼の目がズームインして見ているのに対して、死神はズームアウト、俯瞰した状態で見ている。


 二組がそれぞれ会話していても、カイトは一組に耳を傾けていても、僅かに入ってくるもう一組の会話を死神は聞き取る事が出来るのかもしれない。


 だが、それもカイトが目を覚ましている状態のみ。彼が睡眠時は無防備であり、死神が声を掛けたり、起こすのは不可能という事だ。

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