不可解
「壱!! 彼女が言ったのは本当ですか……アルカイズ様が」
カイトの次に部屋に入ってきたのはメアリ。命約が残っているキスが先に入ってくると思われたが、零の言葉に彼女が反応したのだろう。
メアリはアルカイズの死体を見て、絶句した。これで魔法使いは二人亡くなった事になる。しかも、三が殺されて、時間がそこまで経っていないのだ。
「本当に殺されてるとはね。けど、これはどういう事かしら」
キスもその後に絵画室の中に。メアリはアルカイズの姿に言葉も出ないが、キスは彼の死体がおかしい事に気付いたようだ。
とはいえ、三の時みたいに首が切られているというわけではない。彼の体は全身が残っている。何処かの部位が消えているわけではない。
「切られてはいるのだけど、人形と死に方が違ってるわね」
キスも十の死体が消えた客室で、アルカイズの人形を見ている。勿論、メアリとカイトが最初に目撃したわけだが。
その人形はバラバラではないが、体のあちこちが刻まれていた。それによる出血死だとも思わせる程に。
だが、本物のアルカイズは死体はどうなのか。
カイトは死神の指示で、アルカイズの死体に触れていくのだが、キスもすぐに彼の死体を調べ始める。
手足に数カ所深く切られた跡はあるが、顔や体にはそれがない。部屋に血は流れているが、十や三の死体を発見した時の血溜まりは出来ていない。
「主がしたわけではありませんから。予定外の事でも起きたのでしょうか?」
ゴールド=ゴールは予知の魔法を使うが、完璧とまでにはいかない。カイトは本来参加しないので、無理な話ではあるのだが。
この人形に関しては、彼の予知は関係しない。ディアナ達の死を予知するためだとしても、その前に盗まれているのだから。
単なる見立て殺人であるなら、人形を見せるのが早すぎて、予想外の出来事が起きた可能性はある。魔物の出現もその一つだろう。
『予定外か。それはあるかもしれないが……それが何かだな。まずはアルカイズがこの場に隠れていたのか、もしくは侵入者に幽閉されていたのか』
アルカイズが今まで発見されなかったのは、絵画室に隠れていた。だが、三が死んだ事で命約が切れ、動こうとした時に侵入者と遭遇。
この場合、侵入者がアルカイズを簡単にこのような姿に出来たのか。
戦闘が起きた場合、館にいたメアリやキスが気付くはず。物音が聴こえたにしても、一つや二つで収まらないはずだ。
それにアルカイズも助けを求めればいいのに、二人はその声を聞いていない。
「確かにアンタの言う通りね。ディアナの人形もその時に見つかったぐらいだし。けど、予想外とはいえ、不可解よ」
キスも零の意見に納得はするものの、死体の状況に違和感を感じているようだ。




