アルカイズの死
「……妥当な判断ね。頭は回るかもしれないけど、戦闘は苦手そうだもの。こっちは従者同士で模擬戦を経験させているから問題ないわ」
キスはカイトを値踏みするように体全体を見て、カイトが戦闘に向いてないと判断したようだ。
メアリの従者はカイトしかおらず、従者同士の模擬戦等行った事がない。経験の差があるのは当然。七が剣を扱えるのもそういった理由だろう。
「メアリもそれで構わないわね。この部屋で何かあった場合、壱は当然として……アンタも協力しなさいよ」
「……キス様がそれでいいのでしたら。こちらは人数が多い分、安全ではあるので」
メアリが言う安全というのは、キスや自身の事ではなく、カイトの身の事だろう。彼女も彼が戦闘に向いていない事は把握している。
「私も構いません。絵画は一人ずつしか入れないので、壱も私の動きを見て、すぐに来てくださいね」
零は絵画の前に立ち、その絵を押し込む。すると、絵画が零を巻き込みながら半回転し、朝の景色の絵画になった。
そこに零の姿はなく、絵画室の中へ。見方としては魔法のようにも見えてくる。
ここで零が悲鳴でも上げれば、侵入者が隠れていようものなのだが……
「キス様、メアリ様!!」
聞こえてきたのは悲鳴ではなく、零の驚きの声。彼女が襲われたのであれば、二人の名前を呼ぶはずもない。
「アルカイズ様が……」
そして、その後に出てきた言葉がアルカイズの名前。絵画室に隠れていたにしても、叫ぶような事ではない。
となれば、零が見た彼の姿で考えられる事は一つ。
「アルカイズ様が亡くなってます」
彼が殺されているという事。すでに彼の人形は発見されている。そして、命約を結んでいる三が亡くなっているのであれば、身代わりになる者はいない。
カイトは『アルカイズ様が……』と零が叫んだ時点で、絵画を回転させ、部屋の中に入った。
部屋一面に様々な絵が飾られている中、真ん中に位置するところで、アルカイズが倒れている。
その表情は苦痛で歪んでおり、死んでいるのは明らかだった。
『順番を考えると、彼が死ぬのは間違いない。死体も発見されている。だが、この時点でか……命約が発動しなかった以上、三が亡くなっているのは確実か』
あの死体は三ではないと死神は考えていたのだが、アルカイズの死体が発見された事で、彼女が殺された事は確実となってしまった。
やはり、あれが三の殺された姿だったのか。
『それに問題が幾つもある。一番なのは間違いなく、彼の殺され方だ』
アルカイズを殺したのは侵入者だろう。だが、三の事を考えれば、侵入者の魔法使いは外にいたはず。
侵入者の従者が魔法使いであるアルカイズを殺せたのか。
これも問題の一つなのだろうが、それよりも気になる事がある。それは死神だけでなく、カイト。キスやメアリもそう感じるに違いない。




