居残り
「私がですか? ……これで疑いが払えるのなら、構わないです」
零はキスの指示を了承した。絵画の仕掛けを教えた時点で、メアリ達に協力的にはなっているはずだが。
『……キスも絵画室に聴こえる音量で話しているな。誰かが中にいた場合、相手がどのように反応するか』
キス達の会話が絵画室からでも聴こえていた場合、アルカイズであるならば、素直に廊下へ出てきてもおかしくはない。
侵入者、もしくはその従者がいた時は、攻撃を仕掛けてくるのか。零が共犯だった場合、一番最初に入る事で、隠れる事に徹するのか。
メアリ達は内部を確認していない以上、身を隠す場所があるかどうかも分からない状態なのだ。
「……ここは廊下にいるべきですか?」
キスは七とカイトのどちらかを廊下に残すつもりだ。万が一、絵画室ではなく、別の場所に隠れていた場合、この場から逃げ果せる事が可能になる。それを無くすための手段として、一人を置いておくのだろう。
絵画が回転式なら、ドアを開け放しのように出来ないとも考えての事だ。
『難しい判断だ。この絵に気付かせる事で、中に入るよう誘導させるのが目的であれば、成功した状態だ。罠がないのだとすれば、相手が逃げるためだろう。君が侵入者、その従者と出会した時、対処出来るか。何度も言うが、君が死んだ時点で終わりだぞ』
「それは……そこまでの自信はないかもです」
カイトは戦闘に関して、そこまでの自信はなかった。まして、呪いがある身だ。何時悪化するかも分からない。
廊下で待機して、侵入者と遭遇した場合、その姿を確認出来るわけだが、それで満足するわけにもいかない。
ディアナ達を殺害した理由。犯人が分かっただけでは真相に辿り着いたとは言えないのだ。
それに今の時点では侵入者は二人、メンバーに共犯者がいれば、犯人は複数人いるとメアリ達は考えている。
館内にいる人物と、死体を用意した者。魔法使いとその従者の二人。それも館内にいるのが従者の方であるなら、本命である魔法使いが誰なのか分からなければ意味がない。
「今回は……彼の返答次第かも。前は僕がメアリ達と行動を共にしたわけで、主の安全と命約を考えるなら、絵画室に行くと言うかもしれません」
順番を考えると、今回は七に譲る形になってもおかしくはない。
「私が廊下に残ります。もし、別の部屋から逃げ出そうとも捕まえます。彼では」
七は絵画室に入るのではなく、廊下に残る事を選択。彼も侵入者が別の部屋に隠れている可能性を考慮し、どちらが足止め出来るかとなれば、自身だと思ったのだろう。




