絵画
「……絵……ですか?」
死神が見ている物は、カイトの目に映った物あだ。彼女が気付いたのなら、彼も目にした事になる。零が視線を向けたのは絵画。
カイトが頭の中で地図で確認してみると、絵画が飾られている近くにあるのは絵画室。その部屋に関係があるのか。
「絵……ですか。ちゃんと見てなかったのですが、何か変わっているのですか?」
「全く興味がないのだから仕方ないでしょ。けど、絵が変化したからって何? 食堂の時みたいに移動させたわけ? 流石にそこは気付くでしょ」
食堂の謎解きは絵をそれぞれの場所に移動するものであった。だが、反対側に絵があったとして、運んでいる姿は流石に目につくはず。
飾られている絵はカイトや七よりも大きいからだ。
『風景画。変化したのは空の色だ。朝から夜へ。青空から夜空になったぐらいだ。これは絵画そのものが入れ替わったのか、魔力によって色だけが変化したのか。移動させるにしても、客室側にはこの大きさの絵画はない』
客室側にも絵画はあるようだが、それと入れ替えるにしても、大きさが合わない。下に運ぶにしても、キスとメアリを避けるのは不可能。
魔力により、色が変化したとしても、何の意味があるのか。
「移動……動かしたのは確かです。この風景画は朝と夜、同じ大きさで二枚あるのですが、先程までは朝の景色でした」
「二枚あるという事は魔力によって変化したわけではないと。今は夜になってますが、朝の絵は何処に? 簡単に持ち運べる大きさじゃないですよ」
朝と夜で二枚の絵があるらしい。零がそれを知っているのなら、もう一つの絵が何処にあるのかも知っているはず。
「……僅かながらに隙間があります。この絵はあちら側に回転するのではないでしょうか?」
先頭に立っていた七が絵に近付き、絵画周辺を調べた。そこには左右に線があり、埃が少し落ちている。
「そうです。この部屋にあるドアはダミーで、この絵を回転させて、中に入ります。絵自体は魔導具じゃないんです」
「……そういう仕掛けね。そうなってくると、そこの部屋に誰かが隠れているはず」
絵画がドアの代わりになっている。それは何処かの謎解きの報酬になっていたのかもしれない。
絵画が入れ替わっている事から、誰かが使用したのは明らか。しかも、その部屋に隠れている可能性が高い。
零もそれが分かったからこそ、渋々ながらに絵画の事を教えたのだろう。
「……この部屋が何の部屋なのかは教えて貰えますか? ここ以外に廊下へ出る事が可能なのかどうかもです」
入口が別なのが分かっても、他に仕掛けがあるとも限らない。メアリは念を押すため、零に聞き出す。
「ここは絵画室で、色んな絵が飾っています。主がどんな謎解きを仕掛けたかは分かりませんが、罠はなかったはずです。出入口もこの絵だけです。ドアは使えません」
「だったら、この部屋に一番に入るのはアンタに任せるわ。七か壱のどちらかが廊下に待機。一人は私達と一緒に来る事」
キスは書斎や衣装室を調べるのは後として、最初に絵画室に入るのを選んだ。
それも一番に零をこの部屋に入らせる。彼女の言葉が間違ってないかを、自身で試させるつもりのようだ。




