もう一つ
「メアリの言う通りよ。花のあるなしは関係ないわ。私達が書斎や調合室に行った時、違和感はなかった。というか、全く意識しなかったのよね。魔導具の効果が発動してたのかしら」
「そうですね……私も同じです。気配遮断と似たような感じなのでしょうか。何かの弾みで発動した? あの場に無くなったからこそ、気付けたのかもしれません」
魔導具の効果が発動していたせいで、花瓶の存在に気付かなかった。アルカイズの得意とする気配遮断の魔法と同じ。となれば、利用したのはアルカイズの可能性もある。
「彼女が花を抜いて以降からで、今気付いたとすれば、花瓶が無くなったのはつい先程。物音と関係しているのでは? 花瓶が魔導具だったとして、魔力が無くなったとしても、その場から無くなるのは、誰かが持ち出したからのはずです」
花瓶の存在は零が認めている。それが無くなっているのは、誰かが持ち出したからだ。
それは今いるメンバー全員には不可能。零はカイト達と館の外に出ており、その前も調理場にいた。三が戻ってくるだろう時間にも一階の入口前で待機していたからだ。
メアリ達四人も共に行動していた以上、怪しい行動をする者は誰もいなかった。
「だったら、誰かがいる事は確実ね。花瓶が魔導具だとして、効果は気配遮断であってるわけ? 謎解きとは関係ないのなら、答えれるでしょ」
キスは零に問い詰める。魔導具の効果であるか、もしくは気配遮断の魔法が得意なアルカイズが仕掛けたのかを確認したいのだろう。
「効果までは……ですが、気配遮断ではないはずです。見えなくなって、壊してしまっては元も子もないので」
零も花瓶に何の効果があるのかを知らないようだが、気配遮断である事は否定した。廊下に飾る物に対して、気配遮断の魔法を付けるのは危険ではある。
「気配遮断でない事が分かっただけ、良しとしてあげるわ。奪った本人に聞けばいいだけの話だし。ここからは見る事に集中しなさい。部屋に入るにしても、ドアは開けたままにするわよ」
それは気配遮断の魔法を使用するアルカイズ対策。キス達全員が何処の部屋に入り、ドアを閉めたのであれば、その隙に移動が可能となるからだ。
「……少し待ってください。変わったところは花瓶の有無だけでなく、他にもありました。これに関してはギリギリかもしれないですが」
零は謎解きに関連する可能性があるのにも関わらず、他に変化した箇所がある事に気付き、キス達に報告してきた。
彼女達が気付かなかったのは、花瓶と同じで気配遮断の魔法が使われていたのか。
『……確かにあるな。ほんの少しの変化であり、大きな変化でもあるのか』
零の言葉と視線で、死神も何処が変化したのか気付いたようだ。




