人形
『念の為、全てのベッドの数字を確認しておくか。ちゃんと綺麗に直していたら、時間が掛かりそうだが』
カイトや死神が従者の部屋を見た時、全く使われてない状態だと思わせた。だとすれば、カイトより先に入った、アルカイズの従者である三はベッドの中身を確認するまでには至ってないのかもしれない。
『この部屋を自由に出来る以上、彼女も見られても良い物しか置かないだろう』
死神は優先して調べるのはクローゼットではなく、ベッドだと判断したようだ。カイトがベッドに描かれた数字を覚えていても損ではないだろう。
『ベッドの色と数字が他の従者と同じなのか。君も気になっているようだからな』
ベッドの色は黒、白、赤、青、黄、緑、紫、茶。メアリ、ディアナ、アルカイズ、キスの従者の燕尾服の色がある。
零が着る燕尾服、灰色はないものの、ベッドの色と従者の数字が一致するのか。キスの赤従者の数字は分かってないが、アルカイズの白従者が三。ディアナの青従者の数は十だ。
「……違いますね。僕達の数字とは関係はなさそうです。この館にいた従者の数字かどうかも」
黒のベッドの次に調べたのは対の位置、左側にある白のベッド。
白のベッドに描かれていたのは十。十はディアナの青従者の数字であり、アルカイズの白従者は三だ。
青と白の数字が反対になっているかといえば、そうでもない。青のベッドの数字は四。
白=十 黒=一 青=四 赤=九 黄=八 緑=二 紫=七 茶=五
カイトが全てを確認してみると、こういう結果になった。
零はなく、三や六の数字もない。この部屋に数字や色を入力するような装置もない。
何かしらの意味はあると考えてみるべきだろう。
ベッドの数字を確認した上で、カイトはクローゼットの中身を調べてみる。
そこには不気味な小さな人形が置いてあった。しかも、同じ人形ではなく、微妙に姿形が違っている。
その人形に数字は書かれておらず、ベッドの数字と関連するのかも不明。
魔導具の一つで、主と従者同様、死を肩代わりしてくれる魔導具であれば、カイトとしても助かるのだが、そうではなさそうだ。逆に呪物でもない。カイトが触れても何も変化がないからだ。
『七つの人形か。君がいなかった場合、メアリ達と同じ数になるな。これは偶然か? それとも……』
ベッドとクローゼットが八つであるのに、人形は七体。メアリの従者が来ない事は連絡があり、人形だけが減らされたとも考える事も出来る。
『流石に持っていくのは駄目だろうな。今、ここで調べられるのはこれぐらいか? 残り時間は三十分も無さそうだが』
従者の部屋にも時計があり、十九時三十分に差し掛ろうとしている。
食堂に集合するのは二十時。メアリをそれに遅らせるわけにもいかない。出来て、軽く見回る程度だろう。
『言っておくが、君の体は記憶で構成されている。病気が消えたわけじゃない。無理し過ぎるのも注意しておけよ』




