意見
「すみません。ありがとうございます」
カイトは七と零に頭を下げた。七としてもキスとメアリが協力関係を結んでいる以上、下手に拗らせるわけにもいかないのだろう。
加えて、一つの弱味を握れたと考えていてもおかしくはないが。
「でも……これで死体が三であると証明出来るんじゃないですか? 殺したのも魔物ではなく、魔法だと思いますし」
この死体は零が渡した時計だけでなく、調合室にある瓶まで所持していたとなると、彼女しかいないだろう。
零は死体を調べるのを早々に切り上げるつもりでいるようだ。館外に長い時間滞在するのは、侵入者だけでなく、魔物の狙われる可能性を考えると、彼女の判断は正しい。
それだけでなく、彼女は気持ちの切り替えも早い気がする。三の死を信じたくないようにも見えたのは、気の所為だったのか。
「妥当な判断だと思う。キス様も納得するだろう」
キスとしては、この死体が三だと確認出来れば十分。今の段階で侵入者が従者達に攻撃を仕掛けて来ないのであれば、この場にいないとも取れるからだ。
「壱もそれで構いませんよね?」
零は七が了承した以上、カイトも了解すると思っていたようだが。
「……少し待って頂けたら。メアリ様達の前に御二人の意見も聞いておきたくて」
「えっ!? この死体が三じゃないとまだ疑ってるの?」
零はカイトの発言に驚いている……というより、呆れているのに近いのか。迷惑そうに、少し顔を歪ませているように見える。
「いえ……そこを否定したいのではなくてですね」
『疑うべき事は幾つもあるが……君が気になる事への反応を見るのもありだ』
死神の指示ではなく、カイト自身が感じた事のようだ。彼女の場合、言葉からして、死体が三である事も未だに疑っているようでもある。
「……キス様達も待っている。さっさと話せ」
七もカイトにキツイ目を向けている。
「はい。侵入者は彼女の死体を調べなかったのでしょうか? その時間はあったと思うのですが……それに槍を放置したままなのも疑問です。魔法に回数制限があるわけで、武器の一つは欲しいのではないですか?」
この場に首がない以上、侵入者が持ち帰ったと考えるべきだろう。それ自体も疑問なのだが、何故胴体部分には触れなかったのか。
服に乱れはなく、中に入っていた時計や瓶も奪われていなかった。
侵入者からすれば、道具の一つや二つを奪いたいところではないのか。食料でもあれば御の字のはずであり、瓶の中身も何かに使えたかもしれない。
「言われてみたら……」
「……槍に関しては扱いに難しいからだろう。隠れて動くのには邪魔になる」
零はそこは疑問に思わなかったようだ。七はすぐに意見を返してくる。




