首なし
『はぁ……先に君が何処まで見えているかを、私に教えなさい』
「それは……彼女との差ですか? そこまで変わらないと思いますけど」
死神はカイトが勝手に事を進めていく事に溜息を吐きながらも、扉の隙間から外を確認。
勿論、彼女自身も見る事自体は悪い事だとは思ってない。だが、万能感を出すのは相手に警戒心を生んでしまう。
『本当に彼女が見えてないのか。倒れているのが見えているのであれば、服装やその色、何かしらの情報があってもおかしくはない』
三であれば、槍を装備していたはず。側にそれが落ちているか、それとも握り締めているのか。零は皆にそんな些細な情報を教えてもいいはずだ。
「見えるのは……館に向いている方は足側。顔までは流石に無理です。槍? 長い棒みたいなのが落ちてます。それに服装は……白。魔法使いのローブも付けてないです」
カイトの目だけでも、これだけの情報が手に入った。零の視力が悪い可能性もあるが、信じたくないという気持ちもあったのかもしれない。
倒れているのは高確率で三。アルカイズを示す白色の服を着ている事のもそうだ。
「それと……手足をちゃんと付いてます。魔物に喰われたとかではないかもです」
倒れている人物の手足をちゃんとあるようだ。魔物に襲われた場合、まともに体が残ってなくてもおかしくはない。その報告はキスやメアリにとっては重要だろう。
ただし、死神の場合は違う。彼女が魔物の死体を一時的に擬似的世界に組み込ませた。すでに戻しており、この世界に魔物は存在しない。
彼女達の記憶からも魔物が登場する事はなく、本来の世界に実在していても、この事件には関係してないのだ。
「……以上です。侵入者や魔物が隠れているかは流石に分かりそうにありません」
『メアリ達に伝える情報としては十分だとは思うぞ。私もこの狭い視界からは、侵入者が隠れているかは見える範囲でしか分からないからな』
メアリ達に伝える情報としては十分ぐらいだろう。逆にいえば、それぐらいは零でも確認出来た事になるのだが。
『しかし、君としてはもう少し付け加えておきたいのだろ? あれは倒れているのではなく、死んでいる。あそこには血溜まりが出来ているぞ』
死神はカイトが見た内容に、追加情報を付け加えていく。
まず、あれが死体だと確定させる。血溜まりが出来る程であれば、死んでいるのは間違いないだろう。
『手足が無事だと君は言ったが……首が切断されているな』
カイトの目では更に奥側は見えなかったが、死神の目ではその先が見て取れた。
その死体には首から上がないようだ。血溜まりが出来たのも、それが原因だと考えられるのではないか。
「それって……やっぱり」
首が切断された状態の死体。それは三の人形と同じ姿になっている。




