十五分前
「……分かりました」
「題名に数字がないのを選んだ方がいいかもしれないです。もしくは……七は安全な本がどれかが分かりますか?」
カイトがメアリとキスが本を見ているのを覗き見したのは間違っておらず、それに対するお咎めであるならと、メアリもキスの指示を却下する事はしなかった。
「……いえ……私が知っていたのはその本だけです。複数調べるのであれば、彼だけでなく、私も試します。……よろしいでしょうか?」
「当然ね。ちゃんと壱にもさせなさいよ」
今回は七もキスに聞いたところで、本棚に手を伸ばす。
『……まるで罠がないと分かってるような感じだな。先程のメアリの返事の間も気になる。大丈夫だと言いそうになったのではないか?』
「確かに……そんな風にも思えない事もありませんが、僕達に悪い事は起きてません。数字も貴女が言った数字と同じでしたし……」
七が先に他の本に触れた事で、カイトも神学の本の一冊に手に取った。勿論、メアリの要望通り、数字の入った題名は避けている。
逆に謎解きに数字が関係しているのであれば、取り出す必要があり、安全性はそちらの方が高そうではある。とはいえ、ハズレが用意されていないとも限らないわけだが。
「……線は目次に引かれている事はなさそうです」
カイトが本を開いても、何事も変化はなし。神の数字を見つけた本には目次から線が引かれていたが、この本はなさそうだ。ページをザッと流し見しても、分かるように記されてる物は一切なし。
「こちらもありませんね。他の本も調べますか?」
「メアリ、貴女はどう思うわけ? 496を三つに分けると、上中下の段の答えにはなりそうよ。この数字は線に記されてもいるわね。それだけで信用出来る?」
キスとしては、彼自身が言った言葉ではあるが、七を書斎の謎解きに巻き込みたくないのだろう。メアリとカイトを納得させて、二人にやらせる必要があるのだ。
「……ここまで情報を提供してくださったんです。勿論、私達が試させてもらいます。後は白黒の本の意味と、悪魔の数字ですね。神の数字のように目次に線があれば、少しは楽になるのですが」
メアリもここまでお膳立てされた以上、断るわけにもいかないだろう。協力関係を結んでいる以上、尚更だ。
「メアリ様。悪魔学の本を調べるのは後に。そろそろ、玄関に向かった方がいいかと思います」
メアリは悪魔学の本に手がいきそうになるが、それをカイトが引き止める。
七の情報提供から十五分が経っており、半分の時間が過ぎた事になる。残り十五分であれば、館の入口の方に向かうべきところだ。
それにピアノ室の謎解きを先にすると決めたばかり。それによって悪魔の数字や白黒の本の謎も判明するかもしれない。焦る必要はない。




