線
「……七……それもちゃんと私に許可を取ってからよ。アンタの体は自分だけの物でない事を自覚しなさい」
キス自身、証拠という言葉を使ったせいで、七が行動したのが分かっているからこそ、そこまで咎める事はしなかった。もう少し早くに止めれた事もあるだろう。
どちらにしても、いつかは試さなければならなかった事ではある。
キスが気にしているのは、命約による身代わりに出来る者がいなくならないようにする事だけだ。
「申し訳ありません。この本が魔導書ではない事は分かっていたので。確か……章の名前は……ありました」
それは前の主が七にその本を開けて見せたのか、共に読んでいたのか。彼は本の題名だけでなく、書かれている章まで覚えているようだ。
そこまでになると、七は余程信頼されていたのだろうのか。
「ある程度の文字は分かるはずなんだけど……読めないわね。数字だけが分かるのが救いかしら」
「私も駄目です。私が持っている神学は現在の文字に直されているものなので。数字は今も昔もそこまで変わらないみたいですね」
七が見せてきた本の中身をキスとメアリが確認するが、二人に解読は出来ないようだ。ただし、数字だけは大きな変化はなく、メアリ達でも知る物だった。
「アンタが……読めるわけないわね。この数字だと分かったのも、線が引いてるからよね」
従者にそこまでの古代語を解読させる学術を教えるかどうかでいえば、否だ。
ある程度の知識、マナーは教えるだろうが、それも初期の従者のみ。従者が従者へと教えていくのが当たり前。従者の数が多くなければ、考えられる事だ。
メアリが特別なだけで、魔法使いは自己中心的。そこまで教育するよりも、自身を強化する方を選ぶ。あるとすれば、継承者ぐらいか。それすらも可能性は低いだろう。
七が覚えているのは主の言葉と描かれた文字の形か。題名の文字の形さえ覚えておけば、見つける事は出来るが、普通はそこまでだ。
だが、七が目次のページを開けば、そこだと教えんばかりに線が引かれていた。章やページ、最終的には神の数字までもが赤線と引かれている。
それに加え、駄目押しとばかりに神の示した絵と共に数字が掲げられていた。
「……496ね」
「他に線を引かれた箇所はなさそうですね」
キスとメアリが一緒に本を見ていく中、カイトが覗き見ている事に対して、二人は止める事はしなかった。
「……壱。アンタは神学の本から適当に選んで、中身を確認しなさい。読めないのは分かってる。線が引かれているかどうかよ」
メアリはカイトが覗き見る事を許したが、キスは他の本を確認させるために許容したようだ。




