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失言

 ゴミ捨て場に繋がる搬入口からの通路の中は暗かった。調理場からの明かりがあるのも僅かであり、奥までは届いていない。


 メアリもそれが目に入ったのか、見やすくするために魔法を使おうとしていた。


「七も僕と同じ。ハッキリと見えてたら駄目なんだ。魔導具を使うしか方法がないわけで」


 七が魔導具を使った場合、キスに報告しないのはおかしい。焼却時ならと思うが、中を見るのは危険であり、調理場側から燃やすのは不可能。


 あるとすれば、零に協力して貰うしかない。魔導具を借りるか、中の構造を聞き出すか。


 だとしても、それはキスが尋ねてくるのが分かってなければ、する必要はない。中を見たと言わなければ良かった。


 彼にとっては失言となっていたはずが、カイトが手助けする形になってしまったわけだ。


『通路の色は分かるが、奥の扉の色まで把握しているのはおかしい。ただ……それに意味があったのかもある』


「……キス様のため。何処に謎解きのヒントがあるかも分からないのもありますよ。従者としての行動としては、あるかもです」


 従者が主のために行動する。七が零に頭を下げ、協力を求めた可能性もある。昼食の手伝いをしているのだから、手を貸してもおかしくはない。


 自身であれば、メアリのためにそんな行動をするとカイトの頭の中で過ったのかもしれない。


『君からすればな……だが、君とメアリが特殊なだけだ。主従関係で百パーセント、完全に信用している事はないぞ』


 キスと七の関係を見てもそうだ。意思疎通が完璧ではなく、報連相も確実ではない事が今ので分かった。


 アルカイズと三の関係もそうだ。三は主であるアルカイズを良くは思ってない。むしろ、毛嫌いしている。


「……ですね。三……彼女がそう言ってました。ですが、こういう風にも言ってましたよね。この生活を捨てる事が出来ないと」


 従者になれば、命約による制限もあり、命の危険性もあるが、それでも衣食住に困る事はない。


 新しい魔法使いの従者に簡単になれるわけでもなく、みすぼらしい生活が待っているだけ。


 どんなに嫌な主になったとしても、縋り付くしかないのだ。


 別の魔法使いに唆される場合があったとして、簡単に主が命約を切るかどうかも分からない。逆にそのせいで殺される可能性もある。


 主が何かで死なない限り、もしくは主から手放さない限り、従者が別に行く事はない。彼等にはその決定権がないのだから。


『……そうだったな。君とメアリのような関係でなくとも、従者が今の生活を手放す事は難しい。まして、失敗すれば、自分の命も危険となれば尚更か』


 死神のカイトの言葉に一応は納得するのだが。


『だが、別の世界では自分の命を顧みない行為をする者もいたがな』


 その言葉にカイトが動揺する番になった。彼自身がそちら側だからだ。自分よりもメアリを優先するのは間違いない。だからこそ、命約を切ったのだ。

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