ミス
「そこは僕にやらせてください。もしくは、両方でお願いします」
七がこの場にいる以上、キスとしては彼に指示するのが当然。そして、確認するのは一人で十分だと思っていてもおかしくはない。
「壱!? ……そうですね。私からもお願いします」
メアリはカイトに危険な行為をさせたくはないが、自身で確認するのはキスに咎められる。
キスが気になるように、彼女もどのようになっているのかを知りたいに違いない。
「構わないわ。七は自分で確認するか決めなさい」
キスもそれを了承。七に関しては自分の意思で決めるように指示。
カイトが名乗り出た以上、キスの立場を考えるなら、七も声を上げるべき。だが、メアリの方が先に後押しをしてしまっている。
七が出遅れ理由は何か。
キスは零がゴミ捨てをしている事を確認している。それは七の目を通しての事であり、彼自身も見ている。事前に調べてるのなら、優秀なだけで終わる。
彼女にそう告げればいい。ただ、キスが彼の目を借りている間に、中を確認している事はない。でなければ、キスが直進してまで見るまでもないはず。
「……申し訳ありません。伝えるのを忘れていました。すでに一度……キス様達が薬室に行っている間に調べ終えてました。何ら問題がなかったので、報告すべき事でもないと判断してしまいました」
七が確認出来るのはカイト達が従者の部屋を調べている間だけでなく、薬室=調合室へ三が案内した時間もあった。
そこでキスも七と三の動向を確認はしていない。メアリとカイトの命約の事でそれどころではなかったはずだ。
彼が言葉を詰まらせたのも、ゴミ捨て場を調べる必要がないと自身で判断してしまった結果なのだろうか。
「確かにその時間があったわ。一度調べて、重要ではないと判断したわけね。どんな風になっていたのかを説明してみなさい。それをコイツが確認するから。少しでも間違っていたら、お前の観察不足、ミスだから。私の顔に泥を塗る事になるわね」
キスは七に圧を掛けていく。従者でありながら、自身の判断で行動、報告しなかった事に対してだ。
少しのミスが死に繋がってもおかしくない。それはディアナの死が物語っている。彼女の死後に人形が発見されているからだ。
メアリとの協力関係を結んでる中、きちんとした情報でなければ、足を引っ張る行為に等しい事になる。
キスは七を一番使える従者として連れて来ている事もあるだろう。
彼としてはここで汚名返上、名誉挽回しなければならない。




