搬入口
「こういう風になってるわけね。だとすれば、下から取り出すのは無理だわ」
キスは零の言葉を無視して、ゴミを捨てる事が出来る壁の方へ。
メアリとカイトはキスのように直進するのではなく、軽く見回す行動を取りながら、彼女の元へ。
謎解きに重要になる物が置いてあってもおかしくはない。七は倉庫にあったナイフの位置を、ピアノ室の謎解きに必要だと感じていた節がある。
それ以外にも裏口が本当にないのか。零が口にしていたが、それが事実なのか。謎解きによって、現れる可能性もないわけではない。
『地図でも裏口は見つかっていないのが分かる。ゴミ捨て場もなかったわけで、そこまで調べられてはないのだろう。メアリの行動は悪くはないか。零の警戒がキスの方に向くからな』
キスの行動がメアリを逆に怪しまなくしている。これもメアリが消えたのが最後の理由だったのか。
「確かに……下に取り出し口があれば、ゴミが多い場合はこちらに流れてきたら駄目でしょう」
調理場にゴミが散乱するのは衛生的に避けるべき。上に搬入口を付けるのは正解だろう。
搬入口のある壁には魔導具関連のメーターがある。それは青と赤色で分けられ、指針もついている。
それに似た物が調理道具の魔導具にも設置されているのもある。その魔導具は火を操作する物ばかり。
「火の強弱、使用しているのかを確認するための物ね。こちら側のスイッチはないようだけど?」
キスもメーターが何を示すのかが分かり、零にスイッチの在り処を尋ねる。
「調理場にスイッチはなく、外側のみです。こちら側は、使用しているかの確認のみが出来ます。今は大丈夫ですが、無闇に中を見るのは危険ですよ」
ゴミ捨て場にある魔導具を起動出来るのは外側にあるスイッチのみ。
もし、何らかの証拠があっても、ゴミ捨て場で燃やす事での証拠隠滅は難しい。いや、隠すのみなら可能なのかもしれない。
もしくは、三が外に出たのもアルカイズ捜索だけでなく、ゴミ捨て場を起動する目的があってもおかしくはないだろう。
とはいえ、使用すれば、このメーターで確認されてしまう。調理場の状況が分からないのであれば、タイミングが難しいはずだ。
「アンタに言われると確認しないとね。アンタがここにいる以上、ゴミ捨て場に火が着く事はないはずよね。ゴールド=ゴールとの連絡口かもしれないわ」
キスにとってはゴールド=ゴールに関するヒントがある可能性もあるというのが名目であり、実際は零が共犯者なのかを調べるのが目的だろう。
勿論、そう言いながら、ゴミ捨て場に繋がる穴を見るのはキスではなく、従者である七。
今は起動してなくとも、覗いた時にやられる事も考えられるからだ。




