受け渡し、受け取り
「勿論、人が通れるような大きさじゃないから。まぁ……もしかしたら、ゴールド=ゴールの連絡口として、利用してるかもしれないけど」
零と館の主の連絡方法は分かっていないが、調理場を連絡口として使っていてもおかしくはない。
館の管理は零の仕事であるが、調理場にいる時間が結構長いようにも思える。
『外側がどのようになっているのかは分からないが、物の受け渡しが出来るかもしれないか』
「それは……零が鍵を渡す事も可能かもしれないと」
侵入者、もしくは外に出たばかりの三に鍵を渡す事も可能。
『もう一度調理場に入り、そこの構造を見ないと判断が難しい。受け渡す事は可能だが、受け取る事は出来ない事もある。高さも問題になるからな』
調理場側では物を渡す時は落とせば良いが、受け取る時は下に置いてある物をどう取るのか。
その内部を見なければ、判断するのは難しい。
零とゴールド=ゴールがそこで連絡を取り合っているのなら、可能ではありそうなのだが。
「それを考えると、鍵を外に出す事も出来そうではあるけど、アイツも危険を冒さないでしょ。更に言えば、館の入口の鍵は外側だけでは開けられないから」
死神同様、キスもその考えには至ったようだ。
鍵を外に出しても、中に入るのは困難なのだ。館の入口の鍵は外側から開けれる物だけではなく、内側のみで解錠出来る錠を設置している。それも複数あるのだ
中に共犯者がいない限りは無理な話。それで零が疑われる事を本人も承知しているはず。
だからこその複数の錠だ。一つだと簡単だが、複数だと時間を要する。そんな場面を見せられるようにしたのだろう。
「そっちの話に戻るわよ。メアリは三に疑いを持ったわけよね」
「そんな事は!! ……可能性を示唆したの確かです。本当に彼女を疑っているわけでは」
「疑いなさいよ。疑いは持つべきだから。私も零を疑ってるでしょ。綺麗事を言ってられる状況じゃないのよ」
メアリが誰も疑いたくない気持ちに対して、キスは呆れたように答える。
「侵入者の姿を私達はまだ見てないわけ。共犯者がいると考えた方がいいのよ。それが今いるメンバーにいてもおかしくない事もよ」
これまでの出来事を侵入者単独で出来るかと考えれば、厳しいと思わざるを得ない。
事前に準備をするのも難しい。更に言えば、用意していたとしても、カイトの参加により、それは潰れていてもおかしくはない。
「……そうですね。ですが、それでも彼女が共犯者だとは。私の力不足で、見落としがあるのかもしれません」
キスが言う事が正しいと分かりながら、メアリも信念を曲げるつもりはないようだ。




