ゴミ捨て
「とはいえ、私が感じ取れた魔力だけではなく、他にもあった場合は話は変わってきますから」
三を疑うような状況ではあるが、メアリも三を信用したいのだろう。いや、今のいるメンバーの誰も疑いたくないのかもしれない。
「この事をキス様に伝えるのですか?」
「確実ではないのですが……伝えます。キス様とは協力関係を結んでいます。意見を聞いてみるべきです」
キスは零を疑ってる面がある。ここで三が怪しいともなれば、反発が生まれるかもしれない。だが、意見を聞くのは間違いではない。
一方通行ではなく、多数の面が見えてくる事もある。
「……聞こえてるわよ。アンタ達の声が段々と上がっていくんだもの。気になる言葉も口にしてたしね」
キスは目を開け、メアリ達の方に顔を向ける。二人の会話の声が大きくなり、否応にもキスの耳にも届く事になったようだ。
「す、すみません。魔法を使ったのにも関わらず、邪魔をしてしまいました」
一日に使える魔法の数は三回と決められている。キスは七の目を借りて、零の行動を見る事に集中していたのが、二人の会話が気になってしまったのだろう。
「いいわよ。アイツも七をチラチラと見てたから、警戒はしてるようだったし。監視してるのは予想してたんでしょうね」
零がカイトではなく、七を選んだのも、その節があった。キス自身が魔法を使用して見ているまでは予想はしていないのかもしれないのだが。
「七も手伝いながら、極力目を離す事はなかったわ。まぁ……少し気になるとすれば、ゴミ捨てぐらい?」
「ゴミ捨て……調理場に裏口が存在したのですか!?」
メアリは驚くのも無理はない。館の裏口があるとすれば、そこから侵入者が入った可能性が生まれる。
それを隠していた零も問題であり、侵入者を館に入れたのも彼女になってしまう。
『地図上では調理場に裏口はないぞ。側に僅かな隙間のような物はあるが……隠し通路でもない。人が通れるような広さはないはずだ』
メアリの言葉に死神が反応し、地図を確認する。それはカイトの目にも映されてしまう。
館の構図では、廊下や部屋等もある程度の広さが表示されている。それは人が通れる広さでもあるのだろう。
その中で調理場の横にある部屋。館内にある食堂ではなく、反対側、外側に部屋と呼べる程の広さではないのだが、僅かな空間がある。
そこが何の部屋なのかは書かれていない。
「裏口はないわね。多分だけど、調理場の横にゴミ捨て場か焼却炉が繋がってるんじゃないの。壁際の方にある取っ手を開いて、捨てていたから」
裏口があったのなら、キスもすぐにでも調理場へ乱入しただろう。零を問い詰めたかもしれない。
『君が調理場で零を手伝った時、裏口はなかったが……そのような箇所があったとはな。魔導具や魔力タンクに目が行きがちだったのもあるか』
カイトや死神の目にもそれは映ったのかもしれないが、あの時は死神も多数の魔導具に目が移り、そこまでは把握する事は出来なかった。




