共犯説
「彼女が魔導具を使う素振りはありましたか? 怪しい気もしますが、その隙があったかどうか」
カイトもそこまで三の動きを把握していなかった。だが、少し離れた場所から魔導具を起動したとして、ベッドの近くにそれがなければならない。
そんな物があれば、カイトだけでなく、七のどちらかが見つけてもおかしくはないはず。
どんな魔導具かなのかも見れてないのだ。
「……なかった気がします。三は何も持ってなかったような……あれば、零も気付くはずですし」
三がフラつくところから、ベッドに倒れ込むまでの姿をカイトと零は目撃している。その間に魔導具のスイッチ等を隠すなり、投げ捨てるような動きは一切なかった。
「そうですか……彼女が壱達を眠らせる理由も難しいところではあります」
「アルカイズ様の指示だったとすれば」
「可能性はゼロではないと思いますが、アルカイズ様を捜索するのも演技ではなかった気がします。それに彼女の人形の事も」
三の人形が発見されたのは、自身を疑わせないようにするためなのか。
侵入者の協力者はアルカイズ。いや、アルカイズの協力者が侵入者になるのではないか。
三が館外に出たのもアルカイズ達と合流するためなのか。
連絡手段は? 零とゴールド=ゴールもその手段は分かってはいない。だが、彼女は途中から誰かと共にいる事が多く、そんな時間はなかった。
それでも、カイトは三を疑うのを躊躇った。二人で会話した時、何かを伝えようとしたのは……
「……私よりも壱の方が彼女を見てるはずですから。それに……ディアナ様殺害を考えれば、アルカイズ様が共犯者であるとは」
三が従者達を眠らせて、零から館の入口を盗み、侵入者もしくはアルカイズを中に入れたとする。
だとしても、ディアナは犯人を部屋に招き入れている。それがアルカイズであれば、危険であると本人も分かるはず。
それだけでなく、魔法使いが二人いたとすれば、メアリとキスも殺せたのではないか。アルカイズではなく、侵入者であれば、二人を殺す事は可能なのだが。
『アルカイズ共犯者説はあったが……納得出来ない面があるのは確かだ。それと……彼は次に殺される。キスやメアリを残してだ』
「そうでしたね。……そうなったら」
次に殺されるのはアルカイズ。彼が殺されるのは間違いない。共犯者が彼であった場合、殺されるのは早すぎる。
今の展開では順番が変更はないようにも思えてくる。下手すれば、館外で侵入者と合流するのではなく、アルカイズと三が殺される事があるかもしれない。




