演技
「眠らされた順番は三、七、零、壱の順番で間違いないですか?」
「はい。……魔力の出所が分かったのですか?」
メアリは三のベッドの時とは違い、七の方のベッドを調べるのに時間を掛ける。続いて、零のベッドは通り過ぎ、カイトが使用していたベッドへ。
「……私が感じ取れる魔力でしたら」
メアリが感じ取れる魔力。そう言うのは、魔力は二種類。魔法は二種類、侵入者は二人いた事になる。いや、使用された魔導具が二つなのか。
「壱は何かをやらされたわけではないですよね」
メアリはカイトを疑っているわけでないが、確認を求めてきた。
彼女がカイトに持たせた魔導具は鈴のみ。相手を眠らせる魔導具は持たせていない。
彼女が魔力に気付いたのも、自身の魔力だったから……なんて事はないはずなのだ。
「他の従者達にですか? そんな事はなかったです」
「そうですか。人によって耐性の差はあるにしても、おかしな部分があります。魔導具が二つあったとすれば、納得する事は出来なくもないのですが……」
「疑問があるのなら、教えてください。僕におかしなところがあったのですか?」
魔導具が二つ。耐性の差。メアリが感じ取った魔力がカイトに関係しており、それを理由に疑いを無くそうてしているように、カイト自身が感じている。
「私が魔力を感じ取れた場所は壱と七のベッドです。そこから部屋全体に広がる感じはありませんでした。匂いが集中したのなら、そこにいた人物を眠らせようとしたとも考えれますね」
魔導具によって、匂いが部屋全体には広がった形跡、魔力はなく、カイトと七のベッドに集中していたらしい。それは魔力だけでなく、匂いも同じになるだろう。
「今の壱の体は……なので、人よりも耐性があったのかもしれません。ですが、七の近くに寄った事で限界を迎えたのでしょう」
カイトの体にある魔力があった事で、七達よりも耐性があったのだろう。ある意味、毒と似た感じだったのかもしれない。
一度目は耐える事が出来ても、二度目は無理だった。
「……待ってください。そうなると……三が眠ったのはおかしくないですか?」
「そうですね。彼女だけが匂いを吸ってない可能性があります。匂いが届いたとしても、僅かな量。一番最初に眠るのは……勿論、緊張から意識を失ったかもしれませんが」
『零曰く、寝息を立てていたのだろ? それが演技だったかもしれないわけか』
「彼女も僕の側に寄った時に匂いを吸ったのかもしれませんね。時間差で眠りに付いてしまった。僕と零が話すタイミングを狙っていた……というのは、無理がありそうですが」
三とは違い、零はカイトの側に寄った事で、匂いを吸い込む機会があり、眠ったとしてもおかしくはない。
だが、それは狙って出来たかといえば、そうではないだろう。従者同士が仲良く会話するなど、予想出来るだろうか。特に零が壱に話し掛けるなど。
『君でなくとも、七に話し掛けた時でも良かったのかもしれないぞ』
別に壱でなくとも、七の側に行っても構わない状態にもしておいたのだろう。




