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信用

「……どうしました? これはキス様も同意してくれた事ですよ」


 メアリが少し間を置いたのは、カイトが何を言おうとしているのかを判断しての事だろう。


「何? それは私にも関係するわけ? 時間も勿体ないし、直接私に言う事を許可するわ」


 メアリがキスの名前を口に出した事で、彼女もカイトの言葉に注目してしまう。


「申し訳ありません。主にとって重要な事ですので……それ次第で主がキス様に伝えると思います」


「……ふん!! アンタの体に毒が回ったとかじゃないの。さっさと済ませさない」


 キスは自身の命令を跳ね除けた事で、メアリにとっての重要な事だと理解する。


 従者は主でない魔法使いの命令でも従わなければならない。それを拒否出来るのは、主の命令。主にとっては重要視される事だろう。


「すみません。少し部屋を離れます。何かあれば、声をお掛けください。部屋前の廊下にいます」


 メアリとカイトは話を聞かれないためにも、調合室から廊下へと出る。


 そうなるとキスと三の二人になる。メアリは念を押して、声を掛けた。どちらがどちらでもない。キスが毒を受ける可能性もあるからだろう。


「カイト……壱が言おうとしている事は分かっています。ですが、命約を結ぶつもりはありません」


 カイトが調合室のドアを締めると同時に、メアリは命約を再度結ぶ事を否定してきた。


 魔法使いにはある程度の毒耐性はあるが、完全でない事をキスから聞かされたのだ。


 メアリの体に毒が蝕むのであれば、カイトが身代わりになる事を言うつもりだと思っているに違いない。


「……メアリ様が断る事、譲らないのは僕も分かっています」


「それでは……一体何を言うつもりなのですか? 私からキス様に伝える事など……」


「ディアナ様が亡くなり、アルカイズ様も行方知れず。これから何が起こるかも分かりません。こうなっては、キス様に命約の事を打ち明けてもいいかと思います」


「キス様に私達の事をですか……カイトはキス様なら大丈夫だと」


 メアリは躊躇うような口振りだが、目からは強い気持ちがあるのが伺える。勿論、それは拒否反応ではなく、賛成の目だ。


 キスの言動はきついが、態度や行動が信用に足る人物だと、彼女は判断したのだろう。


「はい。謎解きの協力関係上、命約についてはメアリ様が怪我を負った時点でバレる事です。それよりも先に打ち明けた方が印象が良いはずです」


「それは……そうですね。だからこそ、このタイミングだったわけですか」


「はい。毒による体の変化が僕ではなく、メアリ様に起きれば、キス様も気付くはずです」


「そうなった時、我慢すればと思いましたが……危険な賭けではありましたから」


 メアリは自身の体で毒を調べるのは無謀だと反省はしているようだ。


「そうですよ。謎解きもありますが、侵入者と魔物の件もあります。それをキス様一人で対応するのは厳しいはず。そのため、キス様自身が余程危険にならない限り、手助けをしてくれるのではないでしょうか?」


 これはキスのためであり、メアリのためでもある。


 むしろ、キスがメアリが無謀な行動をするのを止める抑止力になって貰うためでもある。

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