毒薬
「アンタが外に出るのを私達も確認するから。時間になるまで、鍵をこちらが預かると言ってみるのもありね」
調合室を確認した後、二階の探索を一時中断し、三が館外へ出ていくのを見るようだ。
三が本当に外へ行くのか。館の入口の施錠を忘れないか。確認事項はいくつもある。キスは少しでも不安要素を減らしたいのだろう。
入口の鍵に関しても、零が外に出る可能性もある。とはいえ、それをずっと監視続けていれば、謎解きが出来なくなる。
キス自身の身に何か起これば、命約により、七の方に向くため、今のように零の監視は可能だが、その時に七が殺される可能性もゼロではない。
「それは流石に無理だと思います。零の主はゴールド=ゴールですから。上手く理由をつけるのではないでしょうか。魔法を何度もすれば、いずれはバレるかもしれませんから」
「アンタからすれば、何度も魔法を使わされるばかりになるわけだし。そこは無理強いしないわ。上手い事理由を作るのはありそうだから」
従者は魔法使いの命令を聞かなければならないが、優先順位で一番高いのは主である魔法使い。
ゴールド=ゴールからの指示と言われれば、メアリ達も指示も拒否する事が出来る。
「武器は勿論持っていくのでしょうが、彼女も毒を持たせるのは駄目だと思いますか?」
毒薬。三が二人を調合室へ案内するのも、謎解きのためではない。
謎解きは鍵の所有者のであるアルカイズに権利がある。明日までに見つからなかった場合に、メアリ達にそれを譲る事を良しとなっている。
理由は魔物対策のために毒薬を入手するため。
これに関しては館の主から許可を得ている。
魔物は魔法を無効化にするが、遺体には致命的な傷がない事から、毒が効果ありと考えたからだ。
当然、魔物だけでなく、侵入者に対しても使える。
両方とも毒薬を与えるための工夫が必要になるかもしれない。武器に塗る。煙玉のように相手へ毒を吸わせる。
それはメアリ達を眠らせた方法と似ているのではないだろうか。
「駄目ね。本当は武器も持たせたくないもの。奪われる可能性がある物なのだから」
キスは三に毒を持たせるのを却下。彼女が侵入者に殺された場合、奪われる可能性がある。それは武器も同じ。
更に言えば、侵入者や魔物だけでなく、メアリ達にも使える。
メアリ達も持つとしたら、誰が使ったの分からなければ、従者同士の争いに罰はあるのか。
「……開けます」
三はキスに反論する余地はなく、調合室の前に来た事で、ドアを開けた。
「私自身、どれが謎解きに関する事なのか分かりません。毒を入手する事だけにしてください」
彼女は部屋に一歩踏み入れ、待機している。罠が発動する様子もなく、無闇に物に触れるつもりはないようだ。毒関連の知識がなければ、どれが危険物が分からないのだろう。




