警戒
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「良かったのですか? 彼を零の手伝いに向かわせても」
「調合室を見るだけの僅かな間だけだから、問題ないわ。逆にアイツを一人にする方が危ないかもしれないし」
キスが言っているアイツというのは、零の事だろう。
彼女は今は食堂に戻り、昼食の準備に取り掛かっているはず。別の行動、怪しい行動をさせないためにも、キスは七を自分の側でなく、零の手伝いをさせる事にした。
協力というよりも、監視する方が意味合いが強い。
なんせ、彼女の主であるゴールド=ゴールが侵入者と協力関係の疑惑がある。七を零に仕向けたのだから、キスはそう考えているのだろう。
従者である零に何時指示を寄越すかも分からないのもある。
「彼女も一人だと不安はあると思います。私が壱を向かわせるのも良かったのですが」
メアリは純粋に零の心配をしている。
彼女はゴールド=ゴールに疑いを持っていないのか。客室の仕掛けを見るに、疑いを持つべきところだ。
「切り捨てられる事はあるかもしれません」
メアリも館の主に疑いを持ってはいるようだが、感視の魔法から、零は関係なしと取られているようだ。
魔法使いにとって、従者は捨て駒に過ぎない。
彼女一人しかいないが、余計な事や役目を放棄すれば、捨てる可能性はある。
「それもあるわね。継承権争いのためだけに雇われただけなんだから。アンタも外に出る時は警戒しなさいよ。殺されるとしても、何か証拠は残しなさい。さっきも言ったけど、侵入者はアルカイズについて、何か知っているはずよ」
キスは三に忠告する。零と七がこの場から離れた後、彼女はアルカイズの部屋に匂いが無かった事に対する見解を伝えていた。
「分かりました」
三が殺される場合、人形と同じ形であれば、首が飛ばされる事になる。離れた場所から魔法で攻撃された時点で終わってしまう。
彼女が先に怪しい人物を見つけなければならなず、簡単ではない。
「貴女が外に出るのは時間はどうなったのですか? 長時間は危険過ぎますよ」
メアリは三に尋ねた。彼女達の会話の途中で、穴の発見等があり、メアリはそれを聞き逃していた。勿論、それはカイトも同じだ。
「二時間となりました。それ以上は一度戻ってから、継続するかを決めるようです。キス様がそう指示しました」
「それが妥当な時間なのよ。下手に長ければ、彼女が殺された場合、処分する時間を与える事になるからね」
キスは三が殺される前提で進めているようだ。それはこの話が出てから、彼女の考えは一貫している。むしろ、館の主を疑うようになってから、余計になのかもしれない。
館の入口を持つのは零。三以外に外に出るのが可能なのは彼女だけになる。
彼女が三を殺す事はあるのか。従者同士の争いを禁止されているが、彼女に関しては問われていないのだ。




