客室≠従者の部屋
「何をボケッとしている。さっさと匂いがあるのかを確かめるべきだ。ディアナ様の部屋の壁際には穴がないのは見て分かるだろ」
カイトと死神の会話は時間経過で途切れ、七からの叱責が届く。そのため、彼は時計の方に歩みを寄せた。
「すみません。すぐに終わらせます」
アルカイズの部屋に匂いがあったのかを確認するのも重要。
侵入者がアルカイズの不在を知っているかどうか。
『……匂いはなし。時計を動かした様子もない。僅かに汚れが残っている』
零一人では全ての部屋を掃除しきれないのだろう。その中で使用していない客室は掃除の頻度が落ちる。もしくは、彼女が掃除が苦手なのか。
時計付近に僅かながらに埃があり、その跡からも動かした様子はなさそうなのだ。
匂いもなければ、穴を利用してない事は確実。
「匂いはないです。時計も動かされた形跡はありませんでした」
「あっ!! そこまで手が回らなくて。手抜きしたわけではないですよ」
零は掃除が不出来であり、そんな中で調べさせた事に頭を下げた。
「……そのお陰でアルカイズ様の部屋に何もされてない事が分かったのだから」
三は零に頭を上げるように言っている。
アルカイズの部屋に匂いはなかったが、何もされてないわけではない。侵入され、三の人形を置かれている。
その手口に穴が関係してない事が分かった。
それだけではなく、口には出さないが、侵入者がアルカイズの不在を知っていた事にもなる。
「匂いはなかったようね」
メアリがディアナの部屋を調べ終え、キスと共に部屋前に顔を出した。
「ディアナ様の部屋の時計は一番端側にはありませんでした。鍵が掛かった、あの部屋に行く事は無理そうです」
彼女が調べたところ、ディアナの部屋に穴は存在しなかった。一番端の部屋に行くために穴があるのかを見に行くためでもあったようだ。
「これでディアナ殺し、私達が眠らされた件に関してはここまでね。従者の部屋の匂いは消えているのよね」
キスはカイトに確認する。この二つの件はここで切り上げるつもりのようだ。
『ゴールド=ゴールに疑いがある以上、零がいる場で下手に話すつもりはないのだろうな』
キスはこの件で館の主に疑いを持ったに違いない。
死神もそう感じているのか。彼女の考察、カイトの質問の答えに対しての返答はまだない。
『従者の部屋を調べるのを後回しにするようだが、ここも重要になってくる。魔法使い達の部屋とは違って、従者の部屋に隣の部屋はない。時計は廊下側にあったはずだ』
従者の部屋にあった匂いとメアリ達が眠らされた匂いは同一だった。
だが、同じ方法で匂いを送る事は出来ない。時計は廊下側にあり、そこに穴がないのはすぐに分かる。従者の部屋と隣り合った部屋もないのだ。
となれば、メアリ達の部屋とは別の方法となるのだが、今の時点では死神も何も思いついていない。




