仮説
『問題があるのは、ディアナの部屋のもう片方の隣の部屋だ。あの部屋には鍵がかかっている。それに関してはキス達も調べた時に知った事だ』
アルカイズ捜索時、他の客室は鍵が開いていたのにも関わらず、そこだけは閉じられたまま。
それはメアリ達の記憶の地図でもそうなっており、零もその部屋の鍵は所有していなかった。
そこだけが客室ではないのかもしれない。
「ディアナ様は侵入者を中に招き、殺されたわけですよね? 眠らせた場合、部屋の中に入る事が難しくなると考えたから」
「違うわよ。そもそも、眠らせる事自体が出来なかった。客室は全て開いていたから、その穴を利用出来たかもしれないけど、一番端の部屋は別でしょ」
『魔法で鍵を開けるにしても、メアリやディアナに気付かれる可能性がある。そこから準備するには更に時間が掛かる』
「鍵が掛かっていて、開く事が出来ませんでした。再度、ディアナ様の部屋を見ても構いませんか」
メアリは時計の位置が気になり、カイトに命じる事なく、自身でディアナの部屋のドアを開けた。
「アンタも主がディアナの部屋を見ている間に確認しておきなさい。あっちは私が見ておいてあげるわ」
キスはメアリが調べる間に事を済ませろと、カイトに指示した。
メアリの安全はキスが見守るとして、カイトの行動は七と三、零が監視している。
カイトはその中でアルカイズの隣の部屋のドアを開けた。
部屋は荒らされた形跡はなし。一度訪れた時と何も変わっていない。
時計も三の言葉通り、アルカイズの部屋側の壁に掛けられている。
ディアナ側の壁には穴を隠すような物が飾られてはいなかった。
『予想はしていたが、ディアナの部屋側には何もないか。これで一つの可能性、仮説が出来た』
「仮説ですか?」
『一番最初に狙われた魔法使いがディアナだったのか。もとい、十の人形が一番最初に置かれたのか』
「もしかして……あの部屋だったからですか」
『そうだ。全員を眠らせたうえで、あの部屋で殺せるのだから。部屋割りはディアナ達魔法使いで選んだわけではなく、最初から決められていた』
この時に部屋割りを変えていたら、また違った事になっていたかもしれない。
『侵入者に協力してるのは館の主、ゴールド=ゴールである事が極めて高くなる』
「ゴールド=ゴールが協力者で確定ではないのですか? 侵入者自体が館の主である可能性もあるのではないですか? 予知の魔法も実は……」
カイトは死神の考察を聞く限り、侵入者に関係しているのは館の主で間違いない。
メアリが零に感視の魔法を使ったが、それ自体の話を聞いてなければ、反応として正しいはず。
最初からディアナ狙いであれば、予知ではなく、本当に殺害予告。予知の魔法はなかった事になるのではないか。




