覚悟
「人形については分かってます。アルカイズ様と私の両方が見つかっています。次は私達の番だと怯えるに気持ちもありましたが、ディアナ様の死で関係ないと判断しました」
人形の発見順であれば、先に殺されるのはアルカイズか三になるはず。
だが、今回の件で人形による見立て殺人は変わらないが、順番は関係ないと分かった。
なんせ、ディアナの人形が発見されたのは、殺された後だからだ。
勿論、ディアナが先に見つけた可能性もあるのだが、アルカイズ捜索時にはなかった。
わざわざ机の上に人形を置いたのも、メアリ達に発見させるためだろう。
彼女がそんな場所に置く理由がない。むしろ、机の上に置けば、調べ物の邪魔になるはずだ。
「なので、危険を承知で動く事にしました」
「いいんじゃないの。私は止めないわよ。重視するのは謎解きの方だから。むしろ、アンタが犠牲になれば、魔物や侵入者が外にいるのかが確認出来るわけだし。勿論、出る時は入口の鍵はしてもらうわよ」
三が館から出た時に鍵をするのなら、彼女は自由に戻る事は不可能となる。
とはいえ、鍵を開けた状態でいれば、館内が危険になる。キスが言う事は間違ってはいない。
「当然、館の鍵をアンタに渡す事はないわ。その時に奪われたら同じだから。それと調合室の鍵も置いて行ってもらうわ。私達に渡すのが嫌だったら、零に預かってもらうのでも構わないから」
「キス様!! そこまでさせるのは流石に」
「メアリ様。キス様は相応の覚悟があるのかを確認しているだけです。それで私は構いません。館に戻るためには、時間を設定していれば解決します。その時に扉を叩きますので、鍵を開けて貰えたら」
メアリが最後まで言う前に、三が会話に割り込んだ。一従者が魔法使いの言葉に遮るのは問題だが、メアリとキスは協力関係になったばかり。
カイトや七がそこを止めるべきだったところを、三が止めた形だ。
彼女が言うように、キスは言葉はキツイが、それだけ命を捨てる覚悟があるのかを聞いていたとも取れる。
その言葉の意味はキスだけが知っており、それをどう受け取るかも三次第なのだ。
「……分かりました。そこまで言うのでしたら、私に止める権利はありません。キス様も怒鳴るような事をして申し訳ありません」
「別にいいわよ。アンタが従者に甘いのは分かってるから」
三の覚悟にメアリが折れる形になった。
「……仕方ありませんね。三が外に出る事を許可します。ですが、私は一緒について行くは出来ませんから」
魔法使い二人が許可した事で、零も三の外出を許す事に。
『……三の単独行動になるのか。ここで殺される可能性は高い気はするが』
死神が口に出すように、次にアルカイズの死体が発見されるのだとすれば、ここで三が殺されてもおかしくはない。
それはメアリ達も感じている事だろう。
『むしろ、殺されに行くとも取れるか』
それは三の行動が無謀という事で出た言葉なのか。それとも別の理由があって、口に出たのか。




