出過ぎた発言
「そこはお任せします。キス様とメアリ様の二人で、どちらの鍵を持っていても構いません」
零はディアナが持ってきた鍵を回収せず、メアリとキスが持つのを許可した。
「私も気になるので、ディアナ様の遺体があるのかを確認した後、仕事に戻らせて貰います。昼食は十三時を目安にしてください」
メアリ達の会話の内容で、零もディアナの遺体の有無が気になっているようだ。館の管理を主から任されている以上、見ておく事も仕事の内なのだろう。
「キス様、従者全員準備が出来ました」
七がキスに声掛けをする。従者全員とは、カイトと三も含まれる。
「なら、さっさとディアナの部屋を見に行くわよ。やる事は沢山あるんだから」
「それでしたら、私と零の二人でディアナ様の部屋を確認するのはいかがでしょうか。そうすれば、キス様達は従者の部屋を調べるところから始められるかと」
ディアナの遺体を確認するだけであれば、従者達だけで済む話。
キスは七と離れる事になるが、メアリとカイトがいる事もあり、彼女の負担を減らす提案をした。
そうなると、カイトがメアリ、キスと共に行動する以上、再度ディアナの部屋だけでなく、彼女の遺体を確認する事が難しくなる。
「却下ね。ディアナの遺体があるのかは、私自身の目で確認するから。どうせ、メアリの部屋でしなければならない事もあるんだから。そこまで手間じゃないわ」
「私の部屋はディアナ様の部屋の斜め前ですからね。確認だけなら、時間はかかりませんよ」
メアリ達の部屋は二階の右側、客室を借りた形になっている。一部屋の間隔はそこまで離れてなく、そこまで時間のロスにはならない。
それは七も分かっていてもおかしくはない。
『主に知られず、何かをするつもりだったとも考えられるが』
主の命令ではなく、別行動を取ろうとした七に死神は違和感を覚えた。
メアリやカイトがキスと行動しようと、安全とは限らない。従者としては共に動く事を選ぶはず。
七の発言は時間の猶予が欲しいと言ってるようにも取れる。
だが、彼はそこまで怪しい行動を取ってはいない。殆どの時間はキスと共にいたはず。
それが出来る時間はメアリ達が魔物の体毛を調べていた時間だ。
「出過ぎた発言、申し訳ありません。あのような現場をキス様の目が汚れるかと思いました」
七はキスだけでなく、メアリにも頭を下げる。彼もキスに断られた以上、再度進言する事はないようだ。
「今回は許してあげるわ。一応、私達の事を気にしてくれたみたいだから。別の理由なんて……ないわよね」
「当然です。魔法で調べてみても構いません」
キスは失言を許したが、『別の理由』と自身の従者を疑うような言葉も投げつけた。もしくは、余計な言葉を言わないように口止めしたのか。
七の言葉通り、彼の真意を魔法で確認するためには、メアリの感視を使わせる事になる。
勿論、メアリがそれを使うわけがなく、キスも使わせなかった。
使用したとしても、七は感視の魔法を知っているからだ。魔法使いでなくとも、対応が出来ないわけでもない。




