要求
「当然ね」
『当然だな』
キスの言葉の直後、死神もメアリの返答が当然だと踏んでいたようだ。
それに関してはカイトもメアリがキスに協力するのは分かっていた。
キスに協力するのは、メアリ自身だけでなく、カイトの安全に繋がる。
それは侵入者に対するものもあるが、カイトの呪いに関してもだ。
ゴールド=ゴールが持つ回復と予知の魔法。この魔法が各自一つを継承出来る可能性がある。
この場合、メアリは回復魔法の方に手を挙げるだろう。
もし、二つの魔法を継承出来るのが一人になったとしたら、彼女はキスに継承の権利を譲るだろう。
メアリの目的はカイトの呪いを治す事であり、魔法を継承する必要はないと考えていたからだ。
だからこそ、キスに継承権を渡すのを条件に、回復魔法をカイトに使わせる事も出来るはず。
「その代わり……魔法継承を選べた場合、私に回復魔法を譲ってください」
メアリは協力する代償として、キスに継承する魔法の選択権を欲した。
「いいわよ。アンタも強気に言えるのね。そっちの方が裏切る可能性が低くなるから助かるわ。見返りを求めない方が怪しいからね」
キスはメアリが回復魔法を要求した事で笑みを浮かべている。
メアリ達が魔物の体毛を調べるのもそうだが、魔法使いは欲求力が強いのだろう。
彼女が何も求めなければ、キスは協力の提案をしながらも、すぐに解除した可能性もある。
『駆け引きだな。メアリが要望を出したのは正解だと思う。協力関係がこれで成り立つからだ。だが、お互いが完全に信用はしていない。回復魔法を譲るからと、メアリが警戒心を下げなければいいのだが』
メアリはキスが回復魔法を譲る事に了承した事で満足したのであれば、裏切りがあったとしても、見抜けないかもしれない。
キスも回復魔法を得ようとここまで来たのだ。予知魔法があったとしても、簡単に譲る事に違和感を持たなければならないのではないか。
「聞きたい事がもう一つあります。アルカイズを見つけた場合や、謎解きの前に侵入者を撃退した時はどうなりますか? その時点で協力関係は解消となるのでしょうか?」
「いや……継続でいいわ。何が起きるかも分からないんだから。魔物の死体が発見されてもいるんだし」
警戒するのは侵入者だけではない。被害は出てないが、魔物の存在も注意すべき存在だからだ。
『二人の協力関係は成立か。違う展開にはなっていると思うが、次に消える事になっているのはアルカイズ。そうなれば、それよりも先に三が死ぬ事になる。三と行動する事になるが、彼女から目を離さないように』
メアリとキスが共に行動する以上、次に狙われるのはアルカイズ。前回の順番でもそうなっている。
そのためには三が先に死ななけれは、彼が死ぬ事はない。




