問題点
・ディアナの部屋には鍵が掛かっていなかった。
・部屋の中が荒らされた形跡はなし。魔物の体毛も放置したまま。
・ディアナはドア側に背中を向いた状態で包丁で刺され、死亡。
・携帯していたナイフも持っておらず、身を守るための魔法も使用していない。
・何者かを部屋の中に入れたのはディアナ本人。
・ディアナの人形が置かれていた。
・何時殺されたのか。
・ディアナの僅かに曲がった指の先。
・部屋割り
「ディアナも警戒心がなさ過ぎなのよ。あの状況だと誰も中に入れないでしょ。それが館の主と相手が名乗ったとしてもよ」
「私達はまだゴールド=ゴール……館の主と一度も会ってないどころか、声も聞いてませんから。侵入者との判断がつかないはずです」
メアリ達魔法使い、従者を含めて、館の主の事はまるで知らないのだ。ゴールド=ゴールの肖像画は飾られていても、それは館の主本人ではない。主の名前でさえ、本当ではないのだから。
「ディアナ様が殺された時間。私やキス様が眠った後と思うのですが、そのタイミングが分かるものですか? 起きていれば、少しの物音でも気付いた可能性もありますよね」
侵入者はどうやってメアリとキスが眠っている事に気付いたのか。失敗すれば、姿を見られる事になりかねない。
「従者達のように私達も眠らされたのかもしれないわね。魔法ではなく、魔導具。匂いによる物なら、気付かない可能性はあるわ。部屋には別の匂いを用意してたもの」
「……私もです。調べ物に集中するため、香を焚いてました。その匂いで気付かなかったかもしれません。薬草の中には眠り薬になる物もあるはずなので」
メアリとキスもカイト達のように眠らされたのであれば、気付かれる事もなくなる。
とはいえ、二人が部屋に匂いを焚いていた事を知っていなければならない。
それを知るのは従者のみなのか。
「後から従者の部屋を見に行くつもりなんだから、その時に残り香があれば良いのだけど……」
『残念ながら、その匂いは残ってない。君が目覚めた時には消えていた。数時間経過したとはいえ、あそこまで完全に消えたのもおかしな話なのだが』
零曰く、従者の部屋は鍵が掛かったまま。窓もない。ドアの隙間からガスが外へ出て行ったとしても、匂いが完全に消えるものなのか。
「……その匂いは覚えていますか? 別の匂いが混ざっていても知る事は」
『元の匂いがあれば、混じったかどうかは判別は出来る。なるほど……メアリ達の部屋の方で匂いを調べるのか』
「メアリ様。いいでしょうか」
カイトはキスとの会話を邪魔しないよう、メアリの耳元に声を掛ける。
「どうしたのですか? 何か気付いたのですか」
「ちょっと!! この場で内緒話は止めてくれる。発言を許すから、私に聞こえるように話しなさい」
キスに気遣いをしたつもりが裏目に出たが、カイトはこの場での発言権を得る事になった。




