ディアナの死
「……鍵は掛かっているのでしょうか? 確認するために僕がドアノブを回します」
「……そこまで心配する事はないはずです。ドアノブぐらいは私が……」
カイトの神妙な顔にメアリは一瞬、言葉を詰まらせた。だが、カイトの忠告を無視して、ドアノブを回してしまった。
彼女は部屋に鍵が掛かっているはずだと思っていたのだろう。
「……開いてます」
ドアノブは止まる事なく、回る。そうなると、メアリも無意識にドアを開けてしまった。
そして、彼女はメアリの部屋の光景を見て、凍り付き、震える声で呟いた。
「ディアナ様が……死んでいます」
「……はぁ!? どういう事よ!! ディアナの人形は見つかってないのよ。アルカイズよりも先に殺されるわけ……」
キスはその場で固まっているメアリはどかして、ディアナの部屋を確認した。
カイトだけではなく、従者全員がキスの後ろから、彼女の部屋の中を見る。
この場にいる全員がディアナが死んでいると一目見て分かった。
彼女は十同様、背中を刃物で刺されて死亡している。それもドアに背中を向けた状態でだ。
それだけでなく、ディアナが持ってきたであろう魔導具や魔物の体毛、彼女と似た人形が背中を刺された状態で机の上に置かれていた。
人形と同じ殺され方をしているのは、十の時と同じだ。
「……冗談も休み休み言いなさいよ。メアリ!! 呆けてないで、ディアナの死体、それに部屋の中を念入りに調べるわよ」
「は、はい!! すみません」
キスの激により、メアリはディアナの死のショックから意識を取り戻した。
彼女の死をそのままにしてはならない。
「アンタ達も見るのは構わないけど、余計な物に触れないようにしなさいよ。怪しいと思った事は口にするのは許すから」
キスはカイト達が魔法使いの部屋で余計な事をしなきように釘を刺した。それでも、無数の目は必要なのか、従者達でも意見を言う事を許可している。
『キスもすでに違和感を感じる部分はあるのだろう。十の時とは明らかに違うからな』
十の死亡時とは違うところは何か。
「メアリは先に鍵を調べて。魔法を使われた……壊されていたのかよ」
キスはディアナの背中に刺された刃物を確認し始め、メアリにはドアを調べるように指示した。
「鍵ですか? ……壊されてはいないです。内側から普通に鍵は掛かります。ディアナ様が用意した鍵も破壊はされてません。これは少し……いや、かなり」
ディアナは二重に鍵を掛けていた。普通の鍵だけでなく、彼女が用意した鍵も破壊されていない。
これを解除するには魔法が必要になるのだろうが、問題はある。
開けるにしても、破壊するにしても音が鳴るはずなのだ。
普通の鍵を回すにしても、ガチャガチャと音がなる。無理に魔法で開けようとした場合、音が鳴るよう設定されてもおかしくはない。




