三日目
☆
「……大丈夫ですか? 体調が悪くなったりはしていませんか」
「……う……う〜ん……だ、大丈夫です。眠らされていたみたいですね。……他の従者の方達は?」
カイトを起こしたのは零。昨夜、従者全員が眠らされた事は記憶している。だからこそ、零はカイトに体調の変化があるのかを聞いたのだろう。
実際、カイトの体調は悪くない。メアリに魔力を吸い取って貰ってないのだが、睡眠ガスが毒として体が反応したのか。
彼の魔力が増える呪いは毒によって抑えられるようになっている。
「彼等は私達よりも先に目を覚ましていました。主の部屋を確認しに行くため、部屋から出ていったところです」
三と七の二人も無事らしい。流石にこの場で三が殺される事はないだろう。そうなった場合、従者全員が殺されているはずだ。
「……そうだ!! 僕も急いで、メアリ様の安否を確認しないと」
カイトも他の従者同様、主であるメアリの安否を確認するため、部屋を出ようとする。
従者を全員眠らせておいて、何もないわけがない。この場でなかったら、主達の方だとすぐに気付くものだ。
「待ってください。私も行きます。ディアナ様の安否もしないと駄目ですから。それと……朝食の準備は皆さんに協力して欲しいです」
時計は七時を示している。朝食の開始は九時からであり、今まで寝ていたのだから、準備は間に合わないだろう。
零もすぐに準備を開始するべきなのだが、昨夜の事は彼女も気にしているのが分かる。
つまり、彼女……ゴールド=ゴールドの仕組んだのではないという事だ。
「それは勿論です。メアリ様達を朝食抜きにするわけにはいかないので」
『少し待て。部屋の中を一度は確認した方が良い。本当に何も変化はないか。君達が離れた時、誰かが侵入する可能性もある。鍵が掛かったままだったのかも零に聞いておくべきだぞ』
死神はカイトが従者の部屋を出るのを止めた。部屋に変化があるかなしかを調べるのは、メアリの無事を確認するよりも重要な事だ。
メアリの行方不明になる順番は最後にあたる。それを踏まえるべきところではある。
「どうしました? 何か忘れ物でも」
カイトが部屋を出る直前で踵を返した事に、零は驚いた。
「着替えですか? それは後でも……二人もそのまま行きましたから」
七と三も燕尾服に着替えず、向かったらしい。主の安否を考えるなら、着替える暇はなかったのかもしれない。
だが、それを零が口にするのは、早く部屋から出て行って欲しいとも取れなくもない。
「……着替えは後にしますが、武器を取るのは必要ですよね」
カイトはベッドの横にナイフを置いたままにしていたのが功を奏した。
そのお陰で死神に言われたように、部屋の確認をする事が出来た。




