異変
『死体発見の順番だったとして、彼が消えたのはキスの前になっている。ディアナより前でもなく、最後でもない』
つまり、メアリとキスがアルカイズの死を知った証拠というべきか。
地下を見たのは一人。それは地図で一箇所しか示されてないからだ。そこで二人が彼の死体を発見した事はないと考えられる。
『とはいえ、捕まっている状況であれば、地下を見たのは彼の可能性もある。死体も彼を地上に戻せば……』
生死問わず、アルカイズの姿が見当たらない。一時的に隠すためだけに地下を使用。
その場合、最後にメアリが地下を確認したのではないのかもしれない。
ただし、彼を隠す理由は何なのか。それが出来るのは館の構造を知っている者になる。
この館の主であるゴールド=ゴール。もしくは……従者の零になるのだが、彼女にそんな力はあるのだろうか。
アルカイズは気配遮断の魔法を使用していた。探すのにも時間が必要であり、彼女は従者の部屋に鍵を掛けて、眠っていたはずだ。
「……難しい顔をしてるけど、何を考えてるの? 彼や彼女と違って、表情が分かりやすいんだから」
死神との会話時は他の人間の時間は止まっているのだが、それにも限界がある。
声を掛けてきたのは零。従者が休む部屋なのだから、この場にいてもおかしくはない。
アルカイズ捜索は零以外がしており、彼女は館の仕事をしていた。薬室にある毒の使用許可を主に伝える事もあるだろう。
昨日は夜遅くまで、カイト達が起きている時には戻ってこなかったのだが、状況が状況だ。
侵入者や魔物の存在。アルカイズの行方。十の死など目白押しの状態。
零が夜遅くに仕事をするのは危険であると、本人も分かっているからだ。
三の人形の事もあり、主の許可を得て、この部屋にも鍵が掛かっている。
それに加えて、全員が一度に休むのではなく、二人が仮眠を取り、二人が番を張る事に決めた。
最初の番は七と零。三とカイトの組み合わせになっている。
「すぐに寝ないと駄目だよ。順番が来た時に眠ってしまったら元も子もないんだから。それは二人いても同じよ」
七がカイトの方を軽く睨んでいるのが分かる。休む時には休まないといけないのも従者の役目。
無理にでも横になり、眠りにつかなければならない。
「三もだよ。貴女のために二人一組にしたんだから」
カイトだけではなく、三も眠れないようだ。寝ている間に殺される可能性があるのだから、なかなか寝つけないのは分かる。
二人一組にしたのも、侵入者が来た場合の対応が少しでも良くなるからだ。
「……って、どうしたの!?」
零が三の方に視線を向けると、彼女はユラユラと体が揺らいだと思ったら、ベッドに突っ伏した。
三の異変に零はすぐに彼女の側に駆け寄る。先程までは眠れずにベッドの横で立っていたのは、カイトも確認している。




