選択
「勿論、アイツがいない場合の謎解きは私達三人。抜け駆けはなしだから。そこは約束ね」
「……分かりました。でも、アルカイズ様が無事である事が一番なのですが」
キスの提案にメアリは渋々ながらも了承した。ディアナも反対する事はなさそうだ。
彼女はそれよりも重要だとばかりに、次の話に持っていこうとする。
「アルカイズの事は一旦そこで区切りましょうか。今は魔物の方が気になっているはずです。夕食よりも先に調査報告を。時間の事も考えて、その間に従者達が先に食事をさせるのはどうですか?」
魔物の体毛についての進捗状況。ディアナにとってはアルカイズや食事よりも優先されるようだ。
「私は構わないわ。昨日も同じ時間に食べたわけだし、今更よ。この館の時だけは、状況次第で私達よりも先に食事をしても構わないわ」
キスもディアナ同様、魔物に対しての情報交換を楽しみにしているのだろう。従者が先に食事をするのを許すぐらいだ。
「私も問題ないですが……零は大丈夫ですか? 仕事に支障などは」
「いいですよ。先に従者達が食事をするわけですね。ただ……アルカイズ様の捜索にはお手伝いはする時間はないかもしれません」
メアリ達の情報交換が長い場合、夕食の時間が遅くなり、仕事に差し障りが出る。それを考慮すれば、アルカイズ捜索に零が協力するのは難しいだろう。
零はカイト達よりも館に詳しいだろうが、管理は主であるゴールド=ゴールの指示。どちらを優先するかは明らかだ。
「私達が食事をしている間でも別の場所で仕事をしても問題ないわ」
「私もそれで良いです。私達に構わず、仕事をしてくれて構いません。ディアナ様の事も壱がフォローしますから」
キスとメアリは零のどう動くかを了承。唯一、従者がいないディアナに関しては、他の従者でフォローする事に。
「ありがとうございます。それでは従者の方々は先にどうぞ。その間、邪魔にならないよう、私は念の為に一階を見回ってきます」
従者達の食事は各自が運ぶ。
零が食堂を離れるのは、侵入者を警戒しているのもあるのだろうが、魔法使い達三人の会話を邪魔しないためかもしれない。
ただ、彼女も魔物についての話は聞いておきたいところだっただろう。
カイト達は急ぎ、調理場から食事を運び、席に着く。彼等も魔物に関しての情報が欲しいのだろう。対峙した場合、危険を有するのは魔法使いよりも従者になるからだ。
だが、死神はそうではないらしい。
『追わなくていいのか。彼女が狙われないという保証は無いぞ』
零が見回りをするのを手伝うように促してきた。
彼女から魔物の存在の有無を聞いてきたはずが、興味を示さないのはおかしな話だ。
魔物とこの事件が関係あるのかも分からない状況のはず。死神としても情報は手に入れておくべきではないのか。




