不在
「アレを調べるのに没頭してるんじゃないの? 私も時間を忘れてたぐらいだから。時間を教えてくれる従者がいなくてなっているわけだし」
キスもメアリと同じく、時間を忘れるぐらいに調べ物に没頭していたようだ。
二人の場合、時間を知らせてくれる従者、カイトと七がいるが、ディアナにはいなくなってしまっている。未だに調べ物に集中している可能性が高い。
「ディアナ様を呼びに行った方が良いのでしょうか? 部屋にいるのですよね? アルカイズ様に関しては無理ですが」
零が夕食の準備を終えたところで、ディアナを呼びに行くのを提案してきた。
彼女を放っておくと、どれだけの時間が掛かるかも分からない。
「まぁ……私達が呼びに行くよりかは、アンタが呼びに行くのが妥当よね。夕食をここに運ぶぐらいは七や、メアリの従者がやってもいいし」
零でなくても、主の食事を運ぶのも従者の仕事だ。
侵入者の可能性がある以上、毒味をする必要がある。昼食の時もそうだった。
三が先に食べていたが、カイトはメアリだけでなく、ディアナの分の毒味をしていた。
「分かりました。私がディアナ様にお声掛けを」
「申し訳ありません……遅れました。従者に頼り過ぎなのも駄目ですね。集中してる中、誰も止める人がいないのは」
二十時が過ぎたところで、ディアナが食堂に現れた。夕食時ながらも、護身用のナイフは忘れずに持ってきている。従者がいないのだから、当然といえば当然だ。
「私が最後……というわけではなかったようですね」
ディアナは前と同じ席に着く。それはメアリやキスもであり、定位置となっている。
「アルカイズ様がまだ……ここまで来ると、夕食後にでも一度捜した方がいいかと思うのですが。もしかして……があるかと。ディアナ様はアルカイズ様との付き合いが長いのでしたら、こんな事はありますか?」
ディアナ自身、アルカイズとの付き合いが長いと口にしていた。姑息な手段を使う事も把握済だ。
だが、夕食に全員が集まるというのは約束であり、契約。魔法使いにとって契約は重要視される。それをアルカイズは破るのか。
継承争いの最終日等、最後の勝負となったら可能性はあるかもしれないが、今はまだ二日目。
気配遮断で様子見するにしても、この場に来ないはずもない。
「まだ二日目。彼が約束を破るにしても早く過ぎでしょうね。この場に顔を見せるなりはするはすです。何かあったと考えるのもおかしくはありません。彼女が無事であるのなら、生きているのは確実なのでしょうが」
三が生存している以上、アルカイズは殺されていない。だからこそ、ディアナやキスも然程心配はしていないのだろう。
「全員で館を見回りぐらいはしましょうか。人数がいれば、見逃す事は流石にないはずです」
「……全員ね。安全を考えるなら、当然だわ。今この時間に侵入者が入ってきてもおかしくないんだし」




