三人
『……内容は分からないが、零が誰かと話しているな。それも一人ではなく、二人か?』
死神は魔物の死体が発見されながらも、カイトに一声も掛けていなかった。興味を示しそうな物なのだが、それをしないのは何か理由があるのか。
カイトは疑問に感じていたが、彼女に質問をしなかった。彼からの質問を死神は基本的に受け付けない事を聞いていたからだ。
死神から声を掛けてくるのを待たなければならなかった。
「見に行きます」
死神の声は魔物に関する事ではなかったが、それはそれで気にしなければならない。
零を含めた三人。考えられるとすれば、アルカイズと三ではないだろうか。
メアリ、ディアナ、キスは体毛を調べるのに夢中のはず。
三人となれば、キスの可能性もあるが、彼女達が決めた事。一番初めに言った彼女が破るわけにもいかないはず。
「アルカイズ様がいるとなったら、ディアナ様の魔法について質問しないと」
メアリとディアナの協力関係は継続しているが、彼女の得意魔法に関して、メアリは知っておいた方がいい。
変身魔法によって、メアリやキスを陥れる事が可能であると。侵入者と間違って攻撃すれば、罰を受けるのは二人になる。
『アルカイズがいたとして、従者である君に教えるだろうか? 女性であれば話は別だったかもしれないが』
アルカイズの従者である三は女性であり、零を自分の従者に勧誘もしていた。
彼の従者が全員女性だとしたら、女好きというしかない。カイトが女性だった場合、質問の一つでも答えているかもしれない。
『とはいえ、予想は外れたようだ。意外な組み合わせというべきか。あってもおかしくはないのだろうが……』
カイトの目を通じて、死神は疑似的世界を見ているのだから、彼もどんな状況になっているのかを視界に入っている。
零が話しているのは三と七の従者二人だ。
三は未だにアルカイズと再会出来ず、探索を続けているのか。
零が三に声を掛けたのも、武器を渡すためだとしたら理解出来るのだが、そこに七も加わっている理由は何か。
三は兎も角、キスはディアナの従者である十が殺された事は知っているはず。その中で七を単独行動をさせるのは危険だと思わなかったのか。
従者は捨て駒といえど、今いるのは七のみ。従者がいなければ、思うように行動に出れない場面も出てくるはず。
命約による肩代わりも消えてしまうのは、彼女にとって痛手に決まっている。
『主であるメアリの軽食を取りに行くのだから、果物があるかを零に聞くという理由があるぞ』
三人が何を話しているのか。盗み聞きよりも、近付くのに対して、零に頼み事があるという言い訳が可能だ。




