許可申請
「魔物がいるとなれば、他の魔物も生息していてもおかしくありませんね。結界がない以上、館の中に入る可能性も」
ディアナは森の中に他の魔物がいる事を懸念している。ゴールド=ゴールの結界が無くなった事で魔物の侵入を許してもおかしくはない。
「興味はあるけど、今は継承を優先するべきね。魔法使い一人で太刀打ち出来るかも分からないんだから」
キスは魔物に興味を示しながらも、森の探索をするつもりはないようだ。優先すべきは継承問題であるのだが、魔物に単独で挑むのは危険だからだ。
「そうですね。侵入者だけでなく、魔物にまで注意しなくてはいけなくなると……武器を借りておくしかないのでしょうか?」
侵入者の存在だけでなく、魔物まで登場するとなれば、魔法回数が制限されている以上は自身を守るのには心許無いだろう。
メアリ達にとっては武器を持つ理由が出来たわけだ。
「……仕方ありません。予想外ではありますが、館周辺に魔物がいる可能性がある以上、拒否するわけにもいきませんね。ですが、主の許可が出るまで、今みたいに館の外には出ないようお願いします。魔物に殺されるような事があっては困りますので」
零は渋々ながらメアリ達が倉庫の武器を所持する事を許可した。その代わりというべきか、館の外へ出る事に対して、ゴールド=ゴールが許してからでないと駄目になってしまった。
だが、本来はメアリ達が館の外に出る事はなかった。それは彼女達の記憶から作り出された地図からも分かる。
メアリ達が館から出なかった理由は魔物が出現したのが原因だったのか。それとも別の理由があったのか。
帳尻を合わせるように、彼女達を外へ出さないようにしたのは確かだ。
「分かったわ。ディアナ達がナイフを持っている以上、私も所有させてもらうから」
「私達が持っている以上、当然の権利ですが、武器は皆同じ物にして欲しいのよ」
武器を手にする以上、皆が同じ武器、ナイフを選ぶ事をディアナはキスに伝えた。
「あんな魔物はナイフでどうにか出来る相手じゃないでしょ。私達はともかくとして、従者は何を持たせてもよくすべきね」
巨狼の死体を見て、アレを相手にナイフでは無理だとキスは判断した。使い慣れているのであれば、剣や斧を選んだ方が安全ではある。
ただし、ディアナは従者である十はすでに死んでいるのだから、差は生じてしまう。
「ディアナの従者が死んだからって、そこを合わせてたら、自身を守れなくなるでしょ。武器は何を選んでも良いよね?」
キスが言う事は正論だ。身を守るためにはなりふり構ってられない。零が許可すれば、どの武器を選んでもよくなる。
彼女は零に許可を得るだけでなく、メアリに同意を求めてきた。




