番号
「ディアナ!! アルカイズも!? ……ちっ!! 仕方ないわね。今回はメアリ、貴女の意見を通してあげる。どうせ、全員が賛成しないと話さないみたいだし」
キスは二人がメアリ側になった事で、反対しても無意味だと即座に理解し、今回はメアリの意見に譲った形となった。
だが、彼女のメアリを見る視線は変化したようだ。ディアナとアルカイズに送る視線とは明らかに違っている。
カイトもキスの圧に気付き、今の時点で一番警戒する相手だと判断した。
「メアリ様の慈悲に従者として感謝を」
灰色の従者はメアリに頭を下げる。それはディアナとアルカイズの従者も同じ。キスの従者だけが頭を垂れずにいたのは仕方ない。
キス自身、感謝の言葉に舌打ちをしていたからだ。
「それでは二時間後、階段左側にある食堂に集合するという事でよろしいでしょうか? 夕食の時間にもなります。食事が終わり次第、主からの言葉を皆様にお伝えします。それまでは用意した部屋でお休みください。彼等には従者用の部屋もありますので、そこは主の指示に従ってください。それでは二階にある部屋へ」
「案内は必要ないわ。私達の従者が手伝ったんだから、どの部屋なのかは分かってるでしょ。アンタは食事の準備でもしておきなさいよ」
キスは彼女の案内は必要せず、自身の従者を従えて、勝手に二階へ歩みを進めていく。
「はぁ……仕方ないですね。私も案内は必要ないです。アルカイズもそれでいいですよね。十はメアリの部屋も把握してますか?」
「勿論です」
ディアナの言葉に青の従者は頭を下げ、荷物を持った後、先頭に立つ。キスの場合、自ら前に進んだが、先程の事が余程腹が立っているのだろう。
彼女は警戒心が強く、従者が一度行った場所でも、念には念を押してるのかもしれない。
「いいだろう。私とディアナの間にメアリが入る形だ。ないとは思うのだが、キスが何か仕掛けていたら面倒だからな。全員が万全でなければ意味がない。最後尾は三、メアリの従者で構わないな」
アルカイズはメアリよりも後方に下がり、殿は自身の従者とカイトに命令する。
ディアナの従者は番号で十。アルカイズの従者が三。キスの従者の番号は分からないが、色で覚えるのもありだろう。
「アルカイズ様の言われた通りに。カ……壱も三と一緒に最後尾へ。周囲の警戒をお願いします」
「「承知しました」」
カイトと三は二人の主の指示通りに一番後方へ。十を含め、前後で何かあった場合は従者が盾になる形だ。
「彼女もそこまで馬鹿な行動は取らないと思うのだけど……そういう事よ。時間になったら、食堂に集まればいいのね」
「はい。その時間に私が呼びに行っても構いません。もしくは、従者を下で待機させ、連絡する事にしても」
「従者の扱いは主によって違う。時間になれば、各自で動く。呼びに来る必要はない。キスもそうするだろうよ。二時間後となれば、二十時だな。私達も部屋に向かわせてもらう」
アルカイズはチラリと右の大きな時計、柱時計で時間を確認する。
時計は一から十二の数字が描かれており、時計針は六の数字を示してる。
カイトとメアリが館に到着したのも夜に差し掛かる時であり、今は十八時となる。