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巨狼

「三ではなく、零が先に狙われたのですか!? か……壱!!」


「僕が先に様子を見てきます。メアリ様はディアナ様と一緒に」


 カイトは零の悲鳴が聞こえた事で、ディアナやメアリよりも先に進み出した。


 メアリの身の安全を守るために側にいなければならないが、今はディアナと一緒だ。それなら、見に行くのは従者であるカイトの役目。


 危険ではあるが、侵入者の姿が一目でも確認出来れば、死神が特徴を把握する事が可能である。


「待ちなさい。私達も共に行きます。まだ魔法の回数は残っています。仕留めるなら、早く行かなければなりません」


「そうです!! 壱だけを行かせませんから」


 カイトが見に行く間に逃げられたら意味がない。侵入者と遭遇した場合、即刻仕留めに掛からないと後々危険な目に遭うのはメアリ達になる。


 それを拒否する権利はカイトにはない。ただし、彼が先頭を譲る事だけはしなかった。


「彼女の居場所を見つけるにしても、大声で叫んでは駄目です。私達が来る事がバレないようにしないと」


 零が叫んだ事で誰かが駆けつけるのは分かりそうなものだが、従者であれば見捨てる事もありえると、魔法使いだったら考えるかもしれない。


 ディアナはそこを突くつもりのようだ。


『こんな話は聞いてない……か。彼女が声が聞こえたぞ。右の方角だ』


 死神の耳は良く、零の声が聞こえたのか、カイトに進む方向を知らせてきた。


『こんな話は聞いていない』というのは、どういう事なのか。零自身の身の安全は保証されていたはずが、襲われた事で出た言葉なのか。


 館の右端を曲がると、零が立ち竦んでいた。後ろ姿からは怪我をしてるようには見えない。彼女は無事のようだ。


 侵入者である魔法使いの姿は確認出来ない。ただし、それは人の姿ではなかっただけ。


 彼女の足元には何かが倒れていた。それは零の大きさの倍以上あり、四本の足が見える。


 森に獣がいたとしても、あまりにも大きすぎるのではないだろうか。


「大丈夫ですか!! 何があったのか教えて貰えると助かります」


「私も何も分かっていなくて……こんなに大きな獣がいるなんて」


 カイトは零の側にゆっくりと近寄っていく。


 倒れている獣はどうやら死んでいるようだ。そうでなければ、零は喰い殺されていてもおかしくなかっただろう。


「君が倒した……わけじゃないのですね」


 零が持っている鎌に血の跡はついていない。そもそも、鎌で倒せるような相手ではなさそうだ。


 カイトが目にしたのは巨大な狼。この狼が生きていれば、零が鎌で攻撃するよりも早く、爪や牙で殺されていただろう。


 それに死んでいる狼から血が流れていない。刃物で切られた様子はない。

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