魔物の存在
「何も警戒せずに開けるのですね」
カイトは零から借りた倉庫の鍵を使い、扉を開けた事にディアナが驚いている。
「彼女が出入りするところを確認してましたから。他に誰かが入った様子もなかったので」
気配遮断の魔法があったとしても、扉が開くのは目に見える。零が出てから、再度扉が開く事はなかった。
「それなら良いのだけど……見たところ、魔導具は無さそうですね。魔力が空になっているだけなのもあるかもしれませんが」
ディアナは倉庫に入るなり、魔力があるのかを探ったようだ。
零は倉庫に魔導具はないと言っていたが、その確認もあるのだろう。とはいえ、魔導具かどうかは一目で見て分かる物もあれば、そうでないのもあるようだ。
魔力の有無で判断するのであれば、空になれば、ただの物として置かれていてもおかしくないのだろう。
「それにしても……武器庫のように見えますね。それだけの武器が必要だとは思えませんが」
メアリがそう言うのも無理はない。零が持っていた鎌があるのは当然として、予想した通り、斧やナイフ、弓矢が置いてある。その他にも剣もあれば槍もある。
それが各一つずつではなく、複数用意され、ナイフに至っては十個以上が飾られている。
従者に対する数にしても多すぎるのではないだろうか。
『そういえば……この世界に魔法があるのなら、魔物や魔獣は存在しないのか? それを相手にするために置いてあるなら、納得は出来るのだが』
この世界は死神が生み出した擬似的世界ではあるが、大元はメアリ達の記憶から生み出している世界。
館周辺の森に魔物や魔獣が隠れ住んでいてもおかしくはないのではないか。
それを相手にするために生まれたのが魔法である可能性はある。
「僕が知る限りでは遭遇した事はありません。昔は存在はしたらしいので……流石にこの付近にいるのなら、零も注意すると思います」
それ以前にメアリ達へ招待状を送る際に書いておくべき事ではある。今は消えているが、結界も張られていたはずだからだ。
『魔法使い、従者が全員死んだとすれば、魔物や魔獣の可能性もあると思ったが』
死神は少し笑った声になっている。
従者含め、メアリ達が死んだ場合、怪しいのは館の主、その従者である零、侵入者の中の誰かになる。そこに魔物達を加えていいのか。
「それは考え過ぎじゃないですか? 十は何者かに刺されたわけですし、三やアルカイズの人形を置いたのは流石に人だと思いますよ」
魔物や魔獣が館に侵入すれば、流石に分かるはず。それに人形を置いたり、何処かに隠れるのは魔物が出来るのか。人間のような知能がなければ無理だろう。
だからといって、昔に魔物や魔獣が生息していたとすれば、可能性でいえばゼロではない。




