理由
「そこまで縛り付ける程、彼は優秀という事ですか。貴女が朝に起こしに行く事があったので、そうは思えませんでしたが……発言を許可します」
「ありがとうございます」
メアリがディアナの台詞に返事をする前に、カイトは話を切り出した。これ以上、メアリがカイトを庇う言葉を言えば、彼女も流石に呆れてくる。熱くなり、声が大きくなれば、キスやアルカイズの耳に聞こえてもおかしくはなくなるからだ。
カイトはメアリの方をチラッと見ると、彼女は口を閉じた。ディアナが目の前にいるのにも関わらず、彼に頭を下げようとした。
事前に約束した事を破ったのはメアリ。魔法使いにとっての約束は契約と同じで重要視されている。主と従者の上下関係では違うかもしれないのだが、メアリは謝罪は必要だと思ったのだろう。
「メアリ様。僕が余計な事を言ったせいです。申し訳ありません」
だからこそ、カイトが先に頭を下げた。原因はカイトが倉庫を調べる事を進言した事。
メアリがカイトに頭を下げる行為は、魔法使いにとって沽券に掛かってしまう。
「……許します。私も貴方を危険に及ぼす発言をしてしまいましたから」
彼女もそれを察し、カイトに合わせた。ディアナと別行動になった後に謝ってくるのだろうが。
「それで……貴方は何故倉庫を調べないと駄目だと思うのですか?」
カイトとメアリの一連の流れが終わったところで、ディアナは先を促してくる。
「はい。まずは何処に謎解きがあるのかも分かっていません。彼女も敢えて、それを言う事はないかと」
「それもそうですね。魔法使いが行かないであろう場所に置いていてもおかしくはありません。従者がいれば……という話になるやもしれないという事ですか」
倉庫に何が置かれているかは不明。魔法回数が制限される中、必要な道具が出てくるかもしれない。そこで従者が取りに行く時に気付く。
だが、ディアナはすでに従者の十を失っているわけだ。
「そこに謎がなくても、必要な道具があるかもしれません。この時に調べておけば、素早く対処も可能ではないでしょうか」
「なるほど……私の事も考えてくれたのですね。ですが、予想の範囲内です。謎解きが設置されている可能性があるのは承知済みです。ただし、今の状態でするのは危険ですよね」
ディアナも謎解きが倉庫にある可能性はあると当然考えていたようだ。謎解きが原因ではないとはいえ、十が殺された事で、簡単に手を出すのは難しいと判断したようだ。
「……流石です。僕の考えが浅はかでした。ですが、もう一つあります。彼女は庭の手入れのために鎌と袋を持って、外へいきました」
「何かおかしい事があるのですか? 雑草を切り、集めるための物でしょ」
鎌や袋は庭の手入れの道具に過ぎなく、零の行動におかしなところはない。




