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【コミカライズ】愛するつもりなぞないんでしょうから  作者: 真朱
第3章

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09. そのころのディアナ


 さて、同じ頃ディアナは、ラキルスとは異なる街に来ていた。この街には、姉から紹介してもらった武具店がある。ディアナは新たなる武器の物色をしに来たのである。


 もし王都にまで魔獣が侵入してきた場合にどうやって戦うべきか。ディアナは、これが意外と難しいことを察していた。

 戦い慣れた辺境の人間ではなく、大勢の一般人に囲まれている状況下での戦いは、辺境ほど簡単にはいかない。それは、隣国ご一行歓迎パーティーでの一件で、既に身をもって痛感していることだ。


 辺境の人間は、基本的に自分の身は自分で守れるため、ディアナも他人を守りながら戦う必要などない。

 追い込むための袋小路や、集中攻撃に適した開けた場所など、領地自体が戦いやすさを重視して築き上げられているので、障害物を意識する必要すらほとんどない。

 

 が、王都にはそんな配慮などあるはずもない。


 人も障害物もてんこ盛りの中、人的被害を出さないように気をつけつつ、的の小さい犬サイズの魔獣を仕留めなければならない可能性が非常に高いのだ。


 (その場にいる全員を無傷で守るのはだいぶ厳しいな~…。人が多ければ多いほど流れ弾に当たる可能性はどうしたって高くなるし、誤爆で死者を出すのを防ごうと思うと、最悪当たっても死なない程度の威力に留めないといけないよね…)


 魔獣を見たことのない王都の人間は、犬レベルのショボい魔獣であっても、『魔獣が出現した!』という情報だけでパニックに陥る可能性が高い。

 一人がパニくると大概にして周囲もつられるものだ。パニくった集団を制御する術はディアナにはない。こちらが配慮しながら戦うしかないのだ。


 ディアナが普段使っている武器は対魔獣用なので、殺傷力に優れすぎている。一般人だらけの街中で使うには過剰な装備と言える。となると比較的マイルドな武器を調達しておく必要がある。


 王都にある武具店は、王立騎士団の騎士をメインターゲットとしているからか、どのお店も剣やナイフのラインナップに力を入れている。ディアナが求めているのは投擲武器にあたるものだが、そういった類は狩猟用の弓矢くらいしか置いていないお店が多い。

 だが、姉のおススメショップは品ぞろい豊富で、ある意味マニアックな商品も取り扱っていると聞いて、足を運んだわけだ。 


 そして、壁にかかっていたとある品に、ディアナの目は釘付けになる。


 (こ…これは…!伝説のチャクラム………!)

 

 チャクラムとは、投擲武器史上最もあかんヤツである。

 円盤の中央に穴の空いた、ドーナツ型のフリスビーみたいな形状をしており、外周がぐるっと全て刃物になっているという、触るだけでも危険を伴う恐るべきブツである。


 (街中でこれをぶっ放すことはできないけど…!使い道はないかもしれないけど、めっちゃ欲しい…!)


 食い入るようにチャクラムを見つめているディアナに、店員さんがすっと近づいてきた。

 「お客様、こちらの品にご興味がおありですか?」

 「はい!!」

 「それはお目が高い。こちら、盤面の装飾に贅を尽くした品でございまして、磨き上げられた刃の輝きに負けないきらめきを放つよう計算し尽くされた逸品にございます」

 

 嬉々としてセールストークをかます店員さんに、ディアナも嬉々として質問を繰り出す。


 「チャクラムってどう構えるんですか?刃に触れないように盤面を挟むように持つんですか?それとも真ん中の穴に手を通すんですか?」

 「刃には安全カバーが装着されてますので、普通に触っていただいても危険はございませんよ」


 誇らしげに説明する店員さんが意味不明である。

 武器が安全でどうする。それじゃ子供のおもちゃと変わらないではないか。


 「カバーつけたまま投げたら意味なくないですか?」

 「…投げるものではございませんので……」


 この店員さんは、武具店の店員のクセに何をぬかしているのやら。

 『投擲武器』とは、投げる武器って意味である。投げないなんて、用途に反しているのだが。


 「じゃあ何に使うんですか?」

 「儀式でございます。……お客様、儀式用の装飾品をお求めなんですよね…?」

 「―――――えぇぇ………」


 伝説の投擲武器の用途が、儀式の装飾品とは…。

 あれか。祭壇に飾られる何やら有難そうな品々のひとつとして添えものにされるってことなのか。伝説の武器が。

 いや、伝説の逸品だからこそお供え物たりえるってことなんだろう。だから武器なのに贅沢な装飾をかましてるワケね。ディアナ的には扱いに納得はいかないが、理屈は納得できた。


 ちなみに『贅を尽くした』お品なので値段もご立派だった。

 アクセサリーみたいな扱いという意味合いでは理解できるが、ディアナにとって投擲武器とは消耗品である。もちろん回収できそうであればできるだけ回収しているが、基本的には使い捨てなのだ。使い惜しみたくなるお値段のものなどお呼びでない。


 (めっちゃ欲しいけど、公爵家で保管するのも難しいだろうし、使えもしないもの持っててもしょーがないから、涙をのむしかない…っ)


 泣く泣くチャクラムを諦め、店員さんに投擲系の武器のおススメを訊いてみたところ、ブーメランはどうかと薦めてくれた。

 「ブーメランは手元に戻ってくるのが特徴で」とか熱く語ってるけれども。

 「羽根(翼)が二枚のものだけでなく三枚や四枚のものも取り揃えている」と熱心にプレゼンしてくれるけれども。


 一言、言わせていただきたい。


 投擲武器ってもんは、ターゲットに命中したら戻っちゃ来ないものなんです!

 手元に戻って来てる時点で、それは即ちターゲットに当たってないってことであり、武器としての役目を果たしていないってことになるんです!!


 ディアナの父がよく「王都の騎士なんざスポーツ感覚でしかねえ」とボヤいていたものだが、確かに『戦い』に関する意識の軽さを見せつけられたような気がして、

 (こりゃあ王立騎士団には任せておけないなぁ…)

 と、気を引き締めずにはいられないディアナであった。



能天気なコメディしか書いてない私は、この先、

マニアックな武器を扱う作品を書く機会がない気がするので、

ここぞとばかりにチャクラムを登場させました!


書くにあたって最低限は調べているため、私の検索履歴は物凄く物騒です。

サイバー犯罪調査官(?)の方、これは単なる検証作業です。

物騒な計画立ててないです…!

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