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【コミカライズ】愛するつもりなぞないんでしょうから  作者: 真朱
第3章

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05. 姉と義兄のおしごと


 魔獣の森をこの大陸の中央に置いて見た場合、ディアナたちが暮らすこの国は、南東つまり右下に位置しており、末姫が嫁ぐ隣国は右上に位置している。ディアナの実家である辺境伯家は国の北西部にあり、魔獣の森と接している部分は全て辺境伯領にあたる。

 ザイの言う『西の隣国』とは、魔獣の森から見たら南側、ディアナたちが暮らすこの国の左側に位置する国のこと。末姫が嫁ぐ国とは別の国である。


 ラキルスの家は、西の隣国とは特に接点がない。

 公爵家の領地は、国の中央付近に位置する王都のすぐ南側にあり、他国とは一切接していない。公爵家は商会などを営んでいるわけでもないので、他国と直接やりとりを行ったりもしていない。西の隣国出身の知り合いがいるわけでもなく、これといって身に覚えがない。


 「―――――なぜ私たちが…?」

 「それは今こっちも探ってるところだ。若夫婦の情報だけ集めてるらしいから、公爵家そのものが狙いってわけではなさそうなんだけど、このあたりのことは別にディアナに教えても問題ない…って、あ~そうだ。ディアナがいつ戻ってくるか分からないから、ディアナに聞かせたくない話だけちゃっちゃとしておくな。超機密情報だから死んでも他言無用だぞ」


 口調は軽快ながら、ちっとも軽くなさそうな気配をチラつかせてくるザイに、ラキルスは若干遠い目をする。


 「正直なところ、全く聞きたくないんですが……」

 「いやぁ残念!知っとかないと、今後ディアナのフォローが上手く出来ないかもしれないから、潔く聞いとけ!」

 「はあ…。仕方ないですね…」


 ラキルスが心の底から固辞しようが、それを考慮してくれるくらいなら、はじめからトップシークレットを明かそうとするはずなどない。明かす必要に迫られているから明かすのだ。

 ラキルスはひとつ息を吐いて顔を上げた。

 腹を括ったことを見て取ったザイは、周囲に誰もいないこともあってか声を潜めることもなく、何でもないことのように告げた。


 「うち、『王家の影』を生業にしてる家なんだわ」

 「―――――はい…?」


 ザイがあっけらか~んと語った内容は、ラキルスにしてみたら都市伝説と言うか、全くもって現実味を帯びていないものであり…ラキルスはいっそのこと反応に困った。



 そのころディアナは、本邸を飛び出し、改築工事が始まった別棟の方向へと疾走していた。

 別棟の奥、建物の陰になっているエリアに走り込むと、立ち並ぶ木々に囲まれた一角に、一人の女性の姿があった。

 大きく頑丈そうな鳥籠のようなものの上に腰をかけているのだが、鳥籠の中には鳥の姿はなく、キツネのように尖った口と四肢をがっつりぎっちりと紐状のもので縛られた、成犬くらいの大きさの魔獣が転がっていた。形状的にはキツネっぽくはあるが顔の凶悪さが桁外れであり、『邪悪なキツネ』とでも言おうか。喉の奥を鳴らして一応威嚇しているようだが、サイズも特に大きくもなければ動きも封じられているので、何ら恐ろしさを感じさせるようなものではない。

 魔獣が唸る度に、鳥籠の隙間から木の枝で(比較的強めに)つつきつつ、軽くあしらっているのが丸わかりの鼻で笑うかのような表情を浮かべているその女性は、ディアナと全く同じ髪色、瞳の色をしている。

 誰の目にも明らかに、血縁者であることが見て取れる。


 「お姉さま!」

 ディアナは嬉しそうに声をあげ、駆け寄った。


 「久しぶりねディアナ。結婚おめでとう」

 鳥籠の上から立ち上がり、にっこりと微笑んだその女性は、ディアナの実姉、辺境伯家の長女・シンディである。

 ディアナのようなアホっぽさは全くなく、心持ち吊り目でキリッとして見えることもあり、ディアナよりも小柄ながら姉と妹が逆に見えるなんてことはない。


 「うん!ありがとう!伯爵家に会いに行こうとしたんだけど、しばらく外国に行ってるって聞いて」

 「そうなの。ザイのサポートで。ホラ、あいつ弱々だから」

 「さっき会ったけど、ラキより弱っちかったね」

 「でしょ?それなのにあいつ、逃げ足とスタミナだけは凄まじいのよ。我らがお兄様から逃げ切るのよ」

 「えっ!やるねぇ!」

 「でしょ?」


 ディアナの実姉・シンディの夫であり、『王家の影』の家系の嫡男・ザイは、人の印象に残りにくいその特徴の乏しい容姿を活かして諜報活動を専門としていることもあり、戦闘能力は一般人並みでしかない。

 その代わり、何を置いても逃げ切ることに持てる力の全てを激振りしており、逃げ足の速さだけでなく逃げるためのスキルも体に叩き込んでいる。縄抜けもお手の物であり、さきほど隠し部屋に放り込まれていた際も自力で縄を解くことは可能だったのだが、うっかりディアナに殺られたくないので、無抵抗の意思を示すべく縛られたままにしておいたのだ。


 「ところでお姉さま、この魔獣どうしたの?」


 もっと姉と話をしたい思いはありつつ、このままにしておくわけにもいかないので、ディアナは本題に切り込んだ。

 

 「この魔獣、見覚えある?」

 姉・シンディは、鳥籠を爪先で軽くつつきながら問いかける。鳥籠の中の魔獣は小さく唸っているが、シンディが氷の視線を投げかけるとピキリと固まった。


 「う~ん…小型でキツネっぽいのは、わたしは、辺境伯領では見たことないけど…」

 「そうよね?これは実家付近には現れない種類よね」

 「つまり、辺境伯領付近で捕獲したわけじゃないってこと?」

 「ふふ。公爵家に適応して腑抜けたわけじゃなさそうね。その通りよ」

 

 ということは、辺境伯家が討ち漏らしたわけではないって考えていいだろうか。

 ディアナは前線から離脱した身であり、もし辺境伯家が仕留め損なうほどに戦力ダウンしているということであればディアナにも一因があると思わずにはいられないので、何気にホッとしてしまう部分はある。


 「でも、じゃあこれは何処で捕獲したの?」

 「西の国境付近よ」

 「―――――西…?」

 「そう。西の隣国から流入して来たものと考えて、まず間違いないわね」



二つ目の隣国が登場して、分かりにくくなってしまい申し訳ありません。

末姫が嫁ぐ国は『北の隣国』です。

国が増えてくると、国名出さないの苦しいですね…。

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